カップ1つ作るのに、ご主人様とメイドは4000回会話する:江端さんのDIY奮闘記 EtherCATでホームセキュリティシステムを作る(10)(8/8 ページ)
産業用ネットワーク「EtherCAT」の世界を「ご主人様」と「メイド」で説明し続けてきた本連載。今回からは最終章と題し、EtherCATを開発したベッコフとEtherCAT Technology Groupの方々へのインタビューの様子を紹介していきます。今回は、EtherCATを使って感じた不満、疑問を遠慮なく、ぶつけてみました。
次回予告
次回、最終章後編(最終回)は、2016年2月に、みなとみらいのパンケーキ屋に結集して、上記のメンバーに加えて、EE Times Japan編集部で、本連載の担当をしていただいている、村尾麻悠子さんを交えて、EtherCATだけではなく、IoT、Industrie4.0について、それぞれのお立場でしゃべっていただいた内容を、お話したいと思います。
今回のインタビューでは、わずか1秒間の間に、ご主人様(EtherCATマスタ)とメイド(EtherCATスレーブ)が4000回以上もコミュニケーションしながら、1個のヨーグルトカップを作っているいう話が、久しぶりに、私の胸を熱くしました。
この話を受けて、最後に、この春、新入社員として新しくエンジニアとなった諸君にエールを送りたいと思います。
新人エンンジニア諸君。
君たちは、今まさに、この時期、早速、上司から何回もダメ出しされて、落ち込んだり、くさったりしているかもしれませんね。
でもね、かなり見落されがちなのですが、エンジニアは、かなり「幸せ」な人種なのですよ。(参考記事:若きエンジニアへのエール〜入社後5年間を生き残る、戦略としての「誠実」〜 (4/4))
それに、君たち、上司から「1秒の間に4000回以上」も注意されているわけではないでしょう?
Profile
江端智一(えばた ともいち)
日本の大手総合電機メーカーの主任研究員。1991年に入社。「サンマとサバ」を2種類のセンサーだけで判別するという電子レンジの食品自動判別アルゴリズムの発明を皮切りに、エンジン制御からネットワーク監視、無線ネットワーク、屋内GPS、鉄道システムまで幅広い分野の研究開発に携わる。
意外な視点から繰り出される特許発明には定評が高く、特許権に関して強いこだわりを持つ。特に熾烈(しれつ)を極めた海外特許庁との戦いにおいて、審査官を交代させるまで戦い抜いて特許査定を奪取した話は、今なお伝説として「本人」が語り継いでいる。共同研究のために赴任した米国での2年間の生活では、会話の1割の単語だけを拾って残りの9割を推測し、相手の言っている内容を理解しないで会話を強行するという希少な能力を獲得し、凱旋帰国。
私生活においては、辛辣(しんらつ)な切り口で語られるエッセイをWebサイト「こぼれネット」で発表し続け、カルト的なファンから圧倒的な支持を得ている。また週末には、LANを敷設するために自宅の庭に穴を掘り、侵入検知センサーを設置し、24時間体制のホームセキュリティシステムを構築することを趣味としている。このシステムは現在も拡張を続けており、その完成形態は「本人」も知らない。
本連載の内容は、個人の意見および見解であり、所属する組織を代表したものではありません。
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