オンセミ、フェアチャイルドブランドは維持せず:製品群は「極めて補完的」だが(2/2 ページ)
2016年9月19日(米国時間)に、フェアチャイルド・セミコンダクターの買収完了を発表したオン・セミコンダクター。同社は、“世界初のICメーカー”の名は残さずに製品群を統合していく。
製品群は「極めて補完的」
オン・セミコンダクターはここ数年間、自動車、産業、通信の3分野に注力してきた。同社の2015年の売上高の74%はこれらが占めている。フェアチャイルドの売上高も、70%がこれら3分野からの売上高だ。だがRashid氏は、同じ分野に注力していても、「両社の製品ポートフォリオはほとんど重複せず、極めて補完的だ。これは、他の買収事例に比べると、とても特徴的である」と述べる。
買収によって最も強化される分野の1つがパワー半導体だ。Rashid氏は、「フェアチャイルドは中電圧から高電圧の製品に強く、オン・セミコンダクターは低電圧製品とパワー・アナログ製品に強みを持っていた。両社が1つになることで、低電圧から高電圧の全ての電圧範囲において製品を提供できる」と説明する。次世代パワー半導体についても、フェアチャイルドは高耐圧のSiC、オン・セミコンダクターは低耐圧のGaNを手掛けていて、こちらも住み分けができている。
2015年のパワー半導体市場においてオン・セミコンダクターは10位、フェアチャイルドは4位だった。買収後のオン・セミコンダクターは、トップのInfineon Technologiesに次ぐ2位と、一気に順位を上げる。
Rashid氏は「重複していない幅広い製品ポートフォリオがそろったことで、より包括的なソリューションとして顧客に提供できるようになる」と強調した。例えば「モバイル機器向けのパワーマネジメントの用途では、フェアチャイルドはもともとDC-DCコンバーターICなどに強く、オン・セミコンダクターはアダプターやパワーマネジメントICに強みを持っている。これらを組み合わせれば、コスト効率とパワー効率の両方を向上できるソリューションを提案できる」(Rashid氏)
電気自動車/ハイブリッド自動車においても両社の製品群は補完的だとRashid氏は述べる。駆動系や車載用充電装置向けには、フェアチャイルドがSiC FETやSJ(スーパージャンクション) MOSFETを提供してきた一方で、オン・セミコンダクターはGaNトランジスタを手掛けてきた。12V系や48V系の電源システム向けでは、フェアチャイルドはハーフブリッジ・ドライバに強く、オン・セミコンダクターはDC-DCコンバーターに強い。
今回の買収は、オン・セミコンダクターの非GAAP EPSに速やかに反映される予定だ。同社は、2017年末までに年間1億6000万米ドル、2018年末までに同2億米ドル、2019年末までに同2億2500万米ドルのコスト削減を見込んでいる。なお、買収後の売上高目標については「公表できる数字はない」(Rashid氏)としている。
オン・セミコンダクターは、新しい組織体制についても併せて発表した。新組織は、「パワー・ソリューションズ・グループ」「アナログ・ソリューション・グループ」「イメージ・センサー・グループ」の3つから構成されている。Rashid氏は、旧三洋半導体の事業を継承したシステム・ソリューションズ・グループ(SSG)の代表取締役社長を務めていたが、今回の組織変更によりSSGの業務は、上記3つのグループに吸収された。
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