MediaTek、10nmプロセスSoCを2017年Q2に出荷へ:「業界初」の投入
MediaTekが、10nmプロセスを適用したスマートフォン向けSoC(System on Chip)「Helio X30」を2017年第2四半期から出荷する予定だという。ファウンドリーはTSMCを利用する。
2017年Q2に出荷開始予定
台湾MediaTekは、半導体業界初となる10nmプロセスチップ「Helio X30(以下、X30)」の出荷を、2017年第2四半期に開始する予定であると発表した。同社はQualcomm(クアルコム)にとって、スマートフォン向けチップ市場における最大のライバル企業である。
このX30は、MediaTekのスマートフォン向けプロセッサ「Helio」シリーズの次期製品となる。2016年前半に発表された既存の「Helio X20」「同X25」は、20nmプロセスを適用し、トライクラスタCPUアーキテクチャと、10個のプロセッシングコアを搭載している。
MediaTekのCFO(最高財務責任者)を務めるDavid Ku氏は、同社の2016年第3四半期の業績を発表するカンファレンスコールの中で、「X30は、当社にとって初となる10nmプロセス適用チップだ。10nmプロセスチップの市場投入を実現するのは、当社が業界初となるだろう」と述べている。
Ku氏は、「X30はX20と比べて、形状やアプリケーションプロセッサ、消費電力量、モデムなどの面で大幅な性能向上を実現する。またX30は、LTE Cat 10(カテゴリー10)対応モデムを搭載するので、Appleの最新スマートフォン『iPhone 7』に匹敵する性能を実現できる見込みだ。当社はX30のターゲットとして、中国メーカーが2000〜3000人民元(約3万〜4万5000円)で販売しているスマートフォンに狙いを定めている」と述べる。
MediaTekは、TSMCを主要ファウンドリーとして利用し、2017年第2四半期には10nmプロセスチップの出荷を開始する予定だとしている。同社としては、2017年には供給上の制約が生じるとの予測から、10nm/16nmプロセスチップが不足すると見込んでいるようだ。MediaTekとAppleは今後、TSMCの最先端プロセス技術を使用する、主要顧客となるだろう。
MediaTekは、「当社の2016年第3四半期における出荷数量は、供給不足のために減少した。この後の第4四半期も、こうした傾向が続くとみている」と述べる。MediaTekは2016年7月の時点で、「Helioシリーズは2016年末までに、同社のスマートフォン向けチップ出荷数量全体の約20%に達する見込みだ」とする予測を発表していた。
しかし同社は、「顧客企業の勢力や供給不足などの影響を受けたため、Helioシリーズが当社の製品構成全体に占める割合は低下している。2016年第4四半期におけるスマートフォンおよびタブレット向け半導体チップの出荷数量は、1億3500万〜1億4500万台に減少する見込みだ」と述べる。
新たな大口顧客の登場か
台湾・台北のCredit Suisse(クレディ・スイス)のアナリストであるRandy Abrams氏は、カンファレンスコールの会場において、「MediaTekは今回初めて、世界最大のスマートフォンメーカーであるSamsung Electronics(サムスン電子)のデザインウィンを獲得するようだ」と述べている。
Ku氏は、「まずは、ローエンド製品のデザインウィンを獲得した。当社の方針として、特定の顧客企業についてはコメントしない考えだ」と述べている。
クレディ・スイスによれば、MediaTekは現在、中国のスマートフォン向けプロセッサ市場において約45%のシェアを獲得している。インドでは35%、米国では10%以下だという。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- クアルコムがNXPを約5兆円で買収へ
Qualcomm(クアルコム)は、NXP Semiconductors(NXPセミコンダクターズ)を約470億米ドル(約4.9兆円)で買収することで合意した。 - スマホ市場の“敗者”に残された道
前回に続き、中国iaiwaiの格安スマートウォッチ「C600」について検証する。スマートウォッチをはじめとするウェアラブル機器やIoT(モノのインターネット)機器の市場が開拓された背景には、スマートフォン市場でどうしても勝てなかった者たちの“失地回復”に向けた努力があった。 - Samsung、スマホ業績の悪化を半導体事業が補てん
Samsung Electronicsの2016年第3四半期の業績は、スマートフォンの事業は大幅に悪化したものの、好調な半導体事業がそれを補う形となった。 - 2016年Q1のスマホ市場、中国勢8社がランクイン
IC Insightsによると、2016年第1四半期(1〜3月)のスマートフォン出荷台数ランキングでは、上位12社中8社が中国メーカーとなった。そのほとんどが、前年に比べて出荷台数を大きく伸ばしている。 - TSMC、Apple「A10/A11」をほぼ独占的に製造か
TSMCは、Appleの「iPhone」向けプロセッサ「A10」および「A11」(仮称)の製造を、ほぼ独占的に製造することになるとみられている。もう1つのサプライヤーであるSamsung Electronics(サムスン電子)に対する優位性をもたらしたのは、独自のパッケージング技術「InFO」だという。 - 日本の隠れた半導体優良企業「メガチップス」(前編)
世界のファブレスチップメーカーのトップ25に入る、唯一の日本メーカーがメガチップスだ。同社は決断力と実行力に優れ、積極的にM&Aも行っている。知る人ぞ知る、隠れた優良企業であるといえるだろう。