IoT設計を容易にするWICED、Cypress今後も注力:買収したBroadcomのIoT事業
日本サイプレスは2016年12月12日、IoT向け開発プラットフォーム「WICED(Wireless Internet Connectivity for Embedded Devices)」に関する説明会を開催した。
IoT向け開発プラットフォーム
日本サイプレスは2016年12月12日、IoT(モノのインターネット)向け開発プラットフォーム「WICED(Wireless Internet Connectivity for Embedded Devices)」に関する説明会を開催した。
WICEDは、デバイスをクラウド上にワイヤレス接続するまでに必要な相互接続性やソフトウェア開発キット(SDK)、開発者コミュニティーなどを提供している。2016年7月に買収を完了したBroadcomのIoT事業の中に含まれており、それらの期間も合わせると5年以上市場へ展開している(関連記事:IoT機器向けエコシステムを完成――サイプレス)。2016年11月には最新版となる「WICED Studio 4.0」を発表した。
WICED Studio 4.0で提供されるSDKは、Wi-FiやBluetooth、Zigbeeといったワイヤレスコネクティビティだけでない。上位レベルのスタックとなるMQTTやRESTなど、Amazon Web ServicesやIBM Bluemix、Alibaba Cloud、Microsoft Azureといった各種クラウドサービスとの接続までサポートする。これにより、ワイヤレス技術に関する専門知識がなくても、容易に設計開発を可能にするという。
SDKでは、主にソフトウェアライブラリーとインストーラー、開発キットが提供される。また、さまざまなMCUをサポートしたリアルタイムOS「ThreadX」のフリーライセンスも提供。ThreadXはフットプリントが小さく、低消費電力で動作するのが特長だ (クリックで拡大) 出典:日本サイプレス
サポートするMCUはCypressの製品だけでなく、ARMの「Cortex-R」「Cortex-M」を採用したST Microelectronics、NXP Semiconductors、Microchipの製品も含まれる。Cypress SemiconductorのIoT事業部で製品マーケティング担当シニアディレクターを務めるJeff Baer氏は「既存のデザインでこれらのMCUを用いている場合は、WICEDで容易にWi-FiやBluetooth、Zigbeeの機能を追加できる」と語る。
Cypressは対応するハードウェアとして、Wi-FiとBluetoothのコンボチップやワイヤレス通信機能にMCUを組み合わせたSoCなどを提供している。WICED Studio 4.0では、ZigBeeにARM Cortex-M4(動作周波数96MHz)を組み合わせた「CYW20729」、Bluetooth 5.0 readyにARM Cortex-M4を組み合わせた「CYW20719」を追加した。
Jeff氏は、WICEDの強みとして「相互接続性」を挙げる。Broadcom時代から約15年間にわたりワイヤレス技術を提供しており、PCやルータ、スマートフォン、タブレット端末などで高いシェアを築いてきたとする。これらのノウハウ蓄積による高い相互接続性は「IoTのアプリケーションで必ず必要になる」(Jeff氏)と強調した。
Cypressは買収後もWICEDに注力するとしており、今後は既存製品との組み合わせでシナジーを狙う。なお、Cypressと買収した旧BroadcomのIoT事業は互いにBluetoothチップを展開しているが、2017年後半に旧Broadcom製品に統合する見込みだ。
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