IoTにはプログラム可能なネットワークが必要:ノキア「Connected Future」(2/2 ページ)
ノキアは2016年12月13日にカスタマー向けプライベートイベント「Connected Future」を開催し、5G(第5世代)関連の技術などを紹介した。基調講演でノキアは次世代ネットワークアーキテクチャのコンセプトである「Future X」を紹介し、IoT(モノのインターネット)時代では、全てがプログラム可能な柔軟なアーキテクチャが必要になると主張した。
2020年の東京五輪、トラフィックは1万TB超に?
Nokiaのベル研究所で無線システムパフォーマンス特別研究員を務めるハリー・ホルマ氏の基調講演では、オリンピックでのデータトラフィックについて興味深いデータが示された。オリンピックにおけるトラフィックは、2012年のロンドン大会で1150TB(テラバイト)、リオ大会では3250TBだった。2020年に開催される東京五輪では、1万TBを超すトラフィックに対応する必要があるという。さらに、こうした大規模なイベントでは、ユーザーが動画などを撮影してSNSにアップするといった行為が増えることから、通常に比べて、アップリンクの割合が大幅に増加するのが特徴だ。
こうした状況に対応するには、C-RAN(Centralized-RAN)や、ユーザー(端末)に近い場所でデータ処理を行うモバイル・エッジ・コンピューティングなどの技術が重要になるという。
Nokiaは、2018年に韓国・平昌(ピョンチャン)で開催される冬季オリンピックにおいて、28GHz帯を使用した5Gサービスを提供する予定だという。
Connected Futureでは、5G関連のデモも幾つか展示された。下の動画は、5Gの高速通信、低遅延を示すデモである。ボールを置いた板を3台のロボットで動かし、ボールが転がらないように板を安定させるまで、どれくらい時間がかかるかを示した。上部に設置したカメラでボールを認識し、5GまたはLTE経由でロボットを制御する。LTE経由で制御した場合、通信が遅いのでロボットの制御が間に合わず、板を安定することができなかった。一方で5Gの場合は、5秒前後で板が安定した。
なお、このデモでは5Gの通信に4.5GHz帯を利用した。LTEでロボットを制御した時の通信速度は30M〜40Mビット/秒(Mbps)。5Gの通信速度は約2Gビット/秒(Gbps)で、ノキアの説明員によれば、エンド・ツー・エンドでの遅延は往復で2〜3ミリ秒だという。
Nokiaが開発したプロフェッショナル向けの360度VRカメラ「OZO(オゾ)」で撮影した映像を、5Gで伝送するデモも行われた。OZOは8個のカメラと8個のマイクロフォンを搭載し、全方位(360度)の2K動画を撮影できる。デモでは、Connected Futureを開催したホテルニューオータニ東京の庭園にOZOを設置し、撮影した動画をリアルタイムで5G伝送するというもの。ただし、電波法の関係で、庭園からデモ会場に設置した5G基地局までは光ケーブルで映像を伝送していた。デモ会場では、5G基地局から画像処理機器(キヤノンの「Stitch(スティッチ)」を使用)まで、5Gを使って伝送した。
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