2016年半導体業界再編を振り返る:2015年に続いて、やまぬM&Aの嵐(3/6 ページ)
2016年も、半導体業界の“M&Aの嵐”がやむことはなかった――。2016年年末企画として、ことし1年間に半導体業界で繰り広げられた買収劇(16件)を振り返っていく。
7〜9月
豊通エレ、トーメンエレが経営統合を発表
昨今の半導体業界の大再編を受けて、半導体を扱う国内商社の再編機運が高まりつつある。マクニカ、富士エレクトロニクスの経営統合(2015年)に続き、2016年7月、総合商社である豊田通商は、傘下の半導体商社2社、豊通エレクトロニクスとトーメンエレクトロニクスを2017年4月に経営統合すると発表した。
両社の売り上げ規模を合算すると、約4600億円。約4000億円のマクニカ・富士エレホールディングスを超え、国内最大の商社となる見込みだ。さらに、豊田通商によると、車載向け製品の取扱額は約3000億円に達し「世界最大のカーエレクトロニクス商社」となるという。2016年10月には、統合後の新会社の社名を「ネクスティ エレクトロニクス」にするとの発表も行っている。
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なお、半導体商社再編の動きでは、同じ7月に東京エレクトロンデバイス(TED)とバイテックグローバルエレクトロニクスが、NXP Semiconductors製品を扱う合弁会社を設立することで合意し、同年10月1日付で発足させた。NXPが2015年12月にFreescale Semiconductorを買収したことが合弁設立の発端で、旧Freescale製品を扱ってきたTEDと、従来のNXP製品を扱ってきたバイテックとの間で思惑が一致し、合弁設立に至った。
InfineonがCreeのSiC事業を買収=買収額8.5億米ドル
Infineon Technologies(インフィニオン)は2016年7月、Cree(クリー)からSiC(炭化ケイ素)を用いたパワー、RFデバイスを手掛ける子会社Wolfspeed(ウルフスピード)などのSiCに関わる事業を8億5000万米ドルで買収すると発表した(買収完了見込みは2016年末)。
買収対象には、世界シェア3割超を占めるとされるSiCウエハー製造事業も含まれ、Infineonは、SiCをウエハーからデバイス、モジュールまで一貫製造できる体制を構築することになる。
Infineonは、SiCダイオード、JFET(接合型電界効果トランジスタ)型SiCトランジスタに続き、2017年にはトレンチ構造のMOSFET型SiCトランジスタの量産出荷を予定するなど、SiCパワーデバイスでの攻勢を仕掛ける方針。さらに、本買収に伴いRFデバイスへのSiC応用を進め、5G(第5世代移動通信)の実用化などで需要が拡大する見込みのRF市場でシリコンRFデバイスからの置き換えを狙う。
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ソフトバンクがARMを買収=買収額3.3兆円
ソフトバンググループ(以下、ソフトバンク)が2016年7月18日、ARMを買収すると発表した。3.3兆円(約240億ポンド)という買収額の大きさとともに、スマートフォンのCPUコアをほぼ独占するARMが世界的には無名の企業に買収されるとあって、世界中を驚かせた。
ご存じの通り、ARMは、世界最大手のCPUコアIPベンダーで、携帯電話機を皮切りに現在ではスマートフォン用SoC(System on Chip)の他、あらゆる組み込み機器に搭載されるマイコンなどにCPUコアIPを提供。ARMコアは、組み込みCPUの業界標準の地位を築いている。
そのARMを、半導体メーカーでもIPベンダーでもないソフトバンクが3.3兆円もの巨額を投じてまで買収する理由は、見えにくく、さまざまな議論を生んだ。ソフトバンク社長の孫正義氏も、買収を囲碁の布石に例え「上手な人は、(局地戦が行われている)近くにばかり石を置かず、離れた位置に石を置く。その離れた位置の石が、50〜100手後に大きな意味を持つ」と買収会見で語り、中長期での相乗効果発揮を目指した買収であると示唆した。
2016年8月30日には、ARMの株主総会で、ソフトバンクによる買収受け入れを承認し、ソフトバンク傘下に入った。半導体業界内では、これまで独立の下、中立性を保ってきたARMの良さが、ソフトバンク傘下入りで失われてしまうのではないかという懸念も多く、今後の経営方針が注目される。なお、孫氏は、ARMの経営は極めてうまくいっていることから、ARMの経営について口を出すつもりはないとしつつ、「ARMの経営陣の1人として、ARMの中長期的な戦略についての議論には、かかわっていくつもりだ」と述べている。
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