音楽版IoT、100台以上のスマホが音楽に連動:ライブ会場などで一体感ある演出
産業技術総合研究所(産総研)は、音楽に合わせてさまざまな端末機器を制御できる大規模音楽連動制御プラットフォーム「Songle Sync(ソングルシンク)」を開発、実証実験を始めた。
同じ音楽、CG映像を同時に共有、LEDやメカの制御も可能に
産業技術総合研究所(産総研)情報技術研究部門の後藤真孝首席研究員と同部門メディアインタラクション研究グループの井上隆広テクニカルスタッフ、尾形正泰研究員および、加藤淳研究員らの研究チームは2017年8月、音楽に合わせてさまざまな端末機器を制御できる大規模音楽連動制御プラットフォーム「Songle Sync(ソングルシンク)」を開発、実証実験を始めると発表した。インターネットを経由して接続されたスマートフォンなどを制御することで、一体感ある演出を行うことができる。
Songle Syncは、ウェブ上にある音楽の再生に連動して、インターネット経由で100台を上回る機器を同期制御するための仕組みである。例えば、イベント会場の入場者は、所有するスマートフォンのウェブブラウザからSongle Syncにアクセスすると、ウェブ上で公開されている音楽の再生に連動して、自身の端末にも同じ音楽やCGアニメーションを再生/表示したり、ロボットを動作させたりすることが可能になるという。
これを実現するため産総研は、新たに「大規模音楽連動制御技術」を開発し、これまで開発していた独自の「音楽理解技術」と融合させた。大規模音楽連動制御技術は、OSの異なるPCやスマートフォンといった汎用の機器が、Songle Syncのサーバと断続的に通信をしながら、音楽と自律的に連動できるようにした技術である。
同システムを利用する際の手順はこうだ。利用者はまず、自身のスマートフォンやPCのウェブブラウザから、サイト上に公開されている音楽と演出スタイルを選択する。そうすると、自身の端末に音楽再生プレーヤーが表示され、選択した曲のストリーミング再生や曲に合わせたCGアニメーションが表示される。
他の人と一緒に同一の曲と演出を楽しむには、Songle Syncサーバを介して、この音楽再生プレーヤーと連動するためのアクセスキーを取得する。このアクセスキーを用い、自身のスマートフォンなどからSongle Syncのサーバに接続すると、場所を問わず全員が同じ瞬間に同期して、曲とアニメーションを楽しむことができるという。音楽再生かアニメーション表示か、どちらか一方を選ぶこともできる。
音楽連動制御については、アニメーション表示を連動させる画面表示や、LED照明などと連動させた空間演出制御/ファッション制御、小型ロボットや電動カーテンなどのメカ制御といった応用例で、100台以上の機器を同時に制御できることを、既に確認しているという。
産総研は、Songle Synの応用分野としてライブイベント会場やショッピングモール/大規模な商業施設、飲食店、街中全体を使った屋外のイベント、などの用途を挙げた。
プログラム開発者向けの開発キットも用意した。この中にはAPIやサンプルプログラム、チュートリアルなどが含まれている。開発キットを用いることで、開発者は音楽に同期させるための時間管理や、他の機器との連動制御を意識することなく、プログラム開発を行うことができるという。
産総研では、インターネット経由で音楽連動制御されるスマートフォンなどの端末機器で構成されるネットワークシステムを「IoMT(Internet of Musical Things)」と呼び、音楽版IoT(モノのインターネット)として、その活用事例を広げていく考えである。
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