光ファイバーの直径変えずに118.5Tbps伝送:4芯のマルチコア光ファイバー
NTTやKDDI総合研究所などは、既存の光ファイバーと同じガラス直径でありながら、この中に4個のコアを持つマルチコア光ファイバーを用いて、長距離かつ大容量の伝送システムを構築することが可能なことを実証した。
既存の製造技術や接続技術などを有効活用
NTTとKDDI総合研究所、住友電気工業、フジクラ、古河電気工業、NECおよび、千葉工業大学は2017年8月、構造寸法が既存の光ファイバーと同じで、この中に4個のコアを持つマルチコア光ファイバーを用いて、世界最大となる118.5Tビット/秒(bps)の伝送を実現したと発表した。
実験に用いたマルチコア光ファイバーは、ガラス直径が125±0.7μm、被覆直径は235〜265μmである。既存の光ファイバーと同じ国際規格に準拠した構造寸法を採用した。これによって、既存の光ファイバー製造技術や光ファイバー同士を接続するコネクターなど周辺技術を有効に活用することができるという。
また、コアの直径が約10μmの単一モード光ファイバー(SMF)が、今日の光通信で一般的に用いられている。この汎用SMFと同等の伝送品質を実現するためには、ファイバー内で隣り合うコア間の光信号の干渉を低減する必要がある。これを考慮して今回は、1本の光ファイバー内に配置するコア数を4個とした。
上述したマルチコア光ファイバーの設計指針に基づき、住友電工とフジクラおよび、古河電工はそれぞれ、長さが100kmを超える4コアのマルチコア光ファイバーを作製した。いずれも、1260〜1625nmの波長範囲で利用でき、汎用SMFと同等の伝送特性を実現している。
各社が製造したマルチコア光ファイバーを、20〜40kmの長さで分割。製造元が異なるマルチコア光ファイバーを相互接続して、区間長が104km、105km、107kmとなる3種類の光ファイバーケーブルを用意した。これら光ファイバーケーブルの損失を評価したところ、各区間の波長1550nmにおける4コアの平均伝送損失は、融着接続した部分の減衰量を含めて0.22dB/km以下、3区間全長での平均損失は0.21dB/kmであった。この数値は、標準外径のマルチコア光ファイバーでありながら、汎用SMFと同等の伝送特性(MFD特性)を実現できることを示すものだという。
今回は、製造元が異なるマルチコア光ファイバーを相互接続した光伝送路とマルチコア光増幅器などを用い、100Tビット/秒伝送の実証実験も行った。それぞれの伝送区間の終端には、NECやKDDI総合研究所、NTTおよび、古河電工が作製した3台のマルチコア光増幅器を接続し、各区間における光の減衰を補償した。今回は16%の低減効果を確認している。
全長316kmのマルチコア伝送路における100Tビット/秒の伝送特性を確認するため、116波長の16QAM信号を生成し、316km伝送後の伝送品質を評価した。この結果、全てのコアと波長で伝送限界を上回る伝送品質を確認することができ、118.5Tビット/秒の伝送容量を達成したという。
今回開発したマルチコア光ファイバー技術については、2020年前半にも実用化していく考えである。
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