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パルス光を照射、巨大な伝搬スピン波を発生:振幅はこれまでの10倍以上(2/2 ページ)
高輝度光科学研究センター(JASRI)らの研究グループは、磁性合金薄膜にパルス光を照射することで、これまでにない巨大な磁気の波(スピン波)が生成されることを発見した。
外的で非共鳴的に引き起こされた位相変化
この振る舞いについて、研究グループは理論的解明を行った。そうしたところ、スピンの歳差運動の位相が空間伝搬する、いわゆる「伝搬スピン波」が発生していることが分かった。観測したスピン波は、非伝搬スピン波が共鳴的に励起されていることや、これがレーザーによって付加された熱の空間的不均一により、外的で非共鳴的に引き起こされた位相変化であることが明らかとなった。
また、スピン波が励起された組成条件(Gd含有量が22%)では、ほとんど磁石の向きは反転しておらず、レーザーにより付加されたエネルギーのほとんどは、スピン波の励起で消費されたことが分かった。
レーザーパルス光を照射すると伝搬スピン波が発生することは、フェリ磁性の酸化物やフェロ磁性金属などで、これまでも実証されてきたという。ところが、これらの物質系で励起されるのは歳差運動角が0.1〜1度と、振幅が小さいスピン波であった。これに対して、今回の研究に用いたGd-Fe-Co薄膜は、歳差運動角が約15〜20度と、これまでに比べて10倍以上の振幅をもつ、極めて大きい伝搬スピン波を生成できることが分かった。
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