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ニッポンのお家芸“カメラ”にも押し寄せるスマホ用チップセットの波この10年で起こったこと、次の10年で起こること(18)(3/3 ページ)

リコーの360度全天カメラ「THETA」を取り上げる。2017年9月15日に発売されたばかりの最新モデル「RICOH THETA V」と従来モデルを比較していくと、外観にはさほど違いがないにも関わらず、内部には大きな変化が生じていたのだった――。

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組み合わせから、チップセットへ

 図4は基板上の主要なチップの様子である。これ以外にメモリーチップ(DDR3 SDRAMやNAND型フラッシュメモリ)が両者に搭載されている。


図4:「THETA S」(左)と「THETA V」(右)に搭載されているチップセット。THETA Sでは機能チップの組み合せだったが、THETA Vではチップセットの搭載に変化している (クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 THETA Sはさまざまなメーカーのファンクションチップが組み合わされている。日本製チップも多々採用されているが、台湾、米国、欧州、韓国のチップも使われる。対してTHETA Vはスマートフォンなどに多用される米QualcommのSnapdragon625チップセットが活用されている。Qualcommのチップだけで6個。これらはカメラ画像の合成、ISP処理、フォーマット変換のプロセッサ、Wi-Fi/Bluetooth通信チップ、音声処理IC、電源電圧生成および動作最適化のための電源ICまでがセット化されている。これらチップセットは、スマートフォンという省電力と高性能と相反する両仕様を実現するために培われた技術によって成り立っており、THETAのようなカメラ分野でも十分に、能力を発揮できるものであるわけだ!!

 Qualcommのチップセットはデュアルカメラ、前後カメラなどを有するスマートフォン市場で進化を続け、低消費電力で高い画素数を扱えるものになっている。そしてTHETA Vでも、その能力が生かされている。さらにQualcommはプロセッサ、通信チップだけでなく、音声を出力するためのオーディオ用パワーアンプまでもチップセットに組み込み、内部の大半を1社製品で構成するという構造を提供する。Qualcomm以外のチップはメモリとセンサーだけという状況だ。

 本チップセットは、THETA Vだけでなく、2017年他分野も含め多くの製品に活用されている。まさにプラットフォーム。スマホやカメラ、全天カメラ、ネットブック、ドローンなどにも同じチップセットが採用される。

分解して深まった憂慮……

 カメラ、音声など日本のお家芸とも言える分野も、次々とプラットフォーム、チップセットに置き換わっている事例の1つとして捉えておく必要があるだろう。

 THETA Vは極めて優れた製品である。チップ組み合わせからプラットフォーム活用はむしろ正しい流れだと思う。ただこうした流れは、日本製チップの存在感が薄れることに直結する。チップセットなき、日本メーカーの半導体への憂慮が深まる分解であった。

「この10年で起こったこと、次の10年で起こること」連載バックナンバーは、こちら

筆者Profile

清水洋治(しみず ひろはる)/技術コンサルタント

 ルネサス エレクトロニクスや米国のスタートアップなど半導体メーカーにて2015年まで30年間にわたって半導体開発やマーケット活動に従事した。さまざまな応用の中で求められる半導体について、豊富な知見と経験を持っている。現在は、半導体、基板および、それらを搭載する電気製品、工業製品、装置類などの調査・解析、修復・再生などを手掛けるテカナリエの代表取締役兼上席アナリスト。テカナリエは設計コンサルタントや人材育成なども行っている。


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