空中映像を生むプレートの量産化にメド:アスカネット
アスカネットは2017年9月、空中に映像を結像する独自技術「AI(Aerial Imaging)−空中ディスプレイ」の核部品である「AIプレート」の量産化に向けた製造方法の確立にメドを付けたと発表した。
手作業の貼り合わせ工程を排除し、大幅コストダウンに期待
ようやく量産化のメドが付いた――。
アスカネットは2017年9月28日、空中に映像を結像する独自技術「AI(Aerial Imaging)−空中ディスプレイ」のコア部品である「AIプレート」の量産技術確立にメドを付けたと発表した。現状、AIプレートは、数センチ角の小さなガラス製プレートを手作業で貼り合わせて製造していたが、射出成形により10〜20cm角の樹脂製AIプレートを実現する製法を開発したという。
「AI−空中ディスプレイ」は、反射物などがない空間に映像を結像するアスカネット独自の技術。仕組みは、液晶ディスプレイの画面など空中に結像する対象物からの光をAIプレートと呼ぶ独自のプレートで反射し、何もない空中で結像させるもの。
AIプレートは、アルミを蒸着させた短冊状のマイクロミラーを並べた板を2枚貼り合わせた構造をしている。なお、マイクロミラーの鏡面は、上側の板の鏡面と、下側の板の鏡面で交差している。AIプレートは、対象物から放たれ拡散する光をプレート内のマイクロミラーで2度反射し、空中で実像として結像する。
空中で結像する場所は、対象物とAIプレートまでの距離と等しくなる。例えば、対象物から50cm離れた場所にAIプレートを設置したならば、AIプレートを挟んで対象物の反対側、50cmの位置に対象物の映像が結像されることになる。空中結像する対象物は、ディスプレイや人、モノなど選ばないのも特徴だ。
ガラス製AIプレートを使用し実際に空中で結像しているディスプレイの写真。あたかも普通の液晶ディスプレイのように見えるが、フィルムやスクリーンも何もない空間に映像が映し出されていて、手を入れれば突き抜けてしまう (クリックで拡大)
視野角が左右±20度で、空中結像した映像の明るさは対象物の明るさの50%程度に減衰するといった制約はある。ただアスカネットでは「映像を映し出すためのスクリーンなど反射物を使用せず、高画質な映像を空中結像できる唯一の技術」(同社社長兼CEO 福田幸雄氏)と位置付け開発を実施。ガラス製のAIプレート試作品をベースに国内外の展示会などを中心に積極的なマーケティング活動を展開してきた結果、デジタルサイネージやエンタテインメント分野を中心に多くの引き合いを得て、一部で導入が始まっている。
難しかったAIプレートの量産化
しかし「多くの引き合いがある中で現状のガラス製AIプレートは、その製法から量産が行えず、十分な供給量を確保できていない」(福田氏)という。現在のガラス製AIプレートは、マイクロミラーを形成した数センチ角のインゴットをスライスして作る小さなタイル状のAIプレートを手作業で貼り合わせて製造する。そのため、生産効率が悪く高コストで、プレートの大型化も難しいという課題を抱える。
そうした中で、アスカネットでは2年ほど前より、量産を前提にしたAIプレートの製造法の開発を実施し「このほど、量産を前提にした製法による試作プレートが完成した」(同社)という。開発した製法は、射出成形などにより樹脂にマイクロミラーを形成しAIプレートを製造するもの。手間の掛かるタイリング(貼り合わせ)工程がなく、AIプレートを製造でき、製造コストを大幅に削減できる。「これまで数十万円のAIプレートであれば数万円。数万円であれば、数千円になるようなコストダウンが図れる見込み」(福田氏)
量産製法は現状、10〜20cm角のサイズの小型プレートの生産にとどまり大型化に向けた課題がある他、ガラス製AIプレートに比べ空中に映像が飛び出して見える度合いが低いなどの改善余地もある。福田氏は「今後、受注状況などに応じて、開発した製法を用いた量産体制の構築を検討していく」とし、2017年10月3日から6日の会期で開催される展示会「CEATEC JAPAN 2017」などで量産用の樹脂製AIプレートを公開し、市場の反応を見極めながら本格量産を模索していく方針だ。
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