MIPSの行方、生き残りの道はあるのか:売却先は決まったが(2/2 ページ)
Imagination Technologiesは、MIPS事業を、米国資本のTallwood Venure Capitalに売却することを発表した。「MIPSは旧式のアーキテクチャ」という見方が強い中、生き残りの策はあるのだろうか。
MIPSの行方
ではMIPSは今後、どうなるのだろう。
筆者はこの疑問を解くために、「まだ、MIPSを欲しがっている企業はあるのか」と尋ね回った。
Linley GroupのDemler氏は、「MIPSはまだ売り上げがあるため、何らかの価値はある」としながらも、「現時点では、期限切れになっていないMIPS特許でも買い手はない。Imaginationは当時、入札価格を6000万米ドルから引き上げた。だが、MIPSは明らかに資産価値が目減りしていて、わずか5年で1億米ドルから6500万米ドルに急落した」と述べている。
確かに、現在MIPSの一部の顧客には、自動車分野ではMobileye(現在はIntelの傘下にある)、通信分野ではCaviumやBroadcomなど、熱烈な支持者が含まれている。
また、MIPSはスマートフォン用モデムの領域にも参入しているようだ。2017年9月、ImaginationはMediaTekが「スマートフォン用LTEモデム向けのマルチスレッドのMIPS I-class CPU」を採用したことを明らかにした。MediaTekが初めてMIPSを採用したデバイスは、新たな主力製品となる「MT6799 Helio X30」というプロセッサである。MIPSはこのプロセッサのCat-10(カテゴリー10)対応LTEモデムに用いられている。
MIPSがブランド力の面で課題を抱えているのは間違いないし、事業運営に失敗してきたことも明らかだが、一部の観測筋は「MIPSには、まだ可能性がある」という楽観的な見方を変えていない。うまくいけば、利益を挙げるビジネスとして再び成功する可能性があるという。
2017年初め、Tirias Researchの首席アナリストであるKevin Krewell氏は、「MIPSは拡張性のある従来型のCPU設計を維持しており、ソフトウェアのエコシステムを確立している」と述べた。同氏の見解では、「衰退したとはいえ、MIPSにはまだ市場機会がある」という。
MIPSのアーキテクチャには、マルチスレッド技術など、特定の性能と効率面で利点があると見る向きもある。MIPSは、LTEや人工知能(AI)、IoT(モノのインターネット)など、消費電力を重視したリアルタイム処理のアプリケーションに最適である可能性があるという。
だが、Demler氏の予測によると、将来的にはMobileyeがMIPSに置き換わる見込みだという。Demler氏は「MIPSアーキテクチャはARMやARCに少しずつ市場シェアを奪われている」と考えているが、一方で「必ずどこかには買い手がいるものだ」とも述べている。
匿名を条件にEE Timesの取材に応じたある業界筋は、現在のMIPSの価値について問われると、「エンジニアが200人以上も在籍しているチームが、CPU技術の開発を続行している。中には、マルチスレッド技術など、ARMが提供しているものよりも高度な技術がある」と述べた。
“勝ち馬”であるARMを選択するからといって、ARMの競合技術を“負け犬”として切り捨てるわけではない。業界関係者の中には、「半導体業界が、ARMの代替技術を失うのは残念だ」と感じる人もいるようだ。
では、MIPSは今後、どのような方向に進めばいいのか。
ある経営幹部は、「ロードマップを描いてMIPSブランドを復活させ、ARMと“直接対決しない”形で市場に参入することが考えられる。ライセンス提供の好機があり、ARMが主流となっていない一部の市場に注力するならば価値があるのではないだろうか」と述べた。
【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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