「エッジにシフト」なIoTでQualcommを選ぶ理由:IoT問題はモバイル技術で解決せよ(2/2 ページ)
IoT(モノのインターネット)の活用が広がるとともに従来の「エッジ→クラウド転送→サーバ処理」では対応できない場面が増えつつある。エッジ側の処理能力向上が急務だが、そこには解決しなければならない問題が山積している。
「遅延なき制御」が必要、エッジ処理へシフト
このような、IoTを活用する用途において「遅延なき制御」が必要になっている現状から、高度な演算処理を要するインテリジェンスな処理がIoT接続デバイス、つまりエッジ側にシフトしつつある現状をネットワークカメラを例に説明している。
これまでは、ネットワークカメラで取得した画像データをクラウドもしくはサーバに転送し、転送先の演算能力を使って画像を解析し、その結果や解析結果に基づく制御指示をデバイスに転送していた。しかし、このフローでは転送に要する時間が、事象が発生してから対応するまでの遅延時間となる。転送コストやクラウド側への演算負荷集中による処理速度の低下、プライバシーに関する情報をクラウドに転送するリスクも懸念材料だ。
このような状況はドローンや自動運転対応車両でも同様だ。自動運転では危険を認知したら即時に決断して対処行動をとらなければならない。そこに遅延は許されない。自動運転では、運転そのものに加えて、ドライバーの状態把握と状態に合わせた支援もカバーすることが求められる。また、車両単体だけでなく、交通情報システムや周囲に存在する他の車両など、あらゆるものに対して通信しなければならない。このように多岐にわたる自動運転に関連した処理に対してエッジデバイスである車両側での実行が必須になる。
住居設置デバイスでは、これまでのテレビやスピーカーに加えてこれから新しいデバイスがIoTに対応していくようになる。全ての住居設置デバイスを一度に全て購入することは現実的ではなく、多くのユーザーは時間をかけて段階的に新しいデバイスを購入するはずだ。ここで重要なのが、異なるタイミングで購入したデバイスが全て接続できて安定して通信できることだ。現在、複数のメーカーがそれぞれIoT対応デバイスに対する独自のエコシステムを構築しつつあるが、その多くのメーカーで共通しているのが、エッジ側に高い処理能力を持たせるためにSnapdragonシリーズの採用が増えていることだとTalluri氏はアピールする。
工場設置デバイスのIoT利用では、生産設備の故障による損失を回避するために故障発生の「予見」が求められる。また、従業員の装着デバイスがIoTに対応することで故障発生前にトラブルの回避が可能になる。Talluri氏は「産業向けIoT市場には成長の余地がある」と高い成長が期待できることを示唆した。
エッジの性能向上に伴う問題解決に有効な「Snapdragon」
一方でIoT接続デバイス側の処理能力が向上すると、不都合なことも発生する。最も顕著なのが消費電力の増大とデバイスの発熱増加による処理能力の低下だ。IoTを利用するシステムでは、多くのデバイスで全ての機能が常に正常な状態であることが求められる。これまで述べてきたように、デバイス側で負荷の高い演算を処理するのに加えて、複数の演算を同時に並行して、かつ、リアルタイムで処理する必要もあり、これが消費電力の増加とデバイス(に実装した演算チップ)の発熱を引き起こす。消費電力の増加はデバイスに大容量のバッテリー搭載を強いるが、サイズの制約によってはそれがかなわない場合も往々にしてある。
このような問題が実はモバイルデバイスでQualcommが長年取り組んできた課題と共通しており、Qualcommにはその課題の解決に長年の経験と豊富な実績がある。その分かりやすい例がプロセッサのヘテロコンピューティングアーキテクチャだ。
ヘテロコンピューティングでは、デバイスで必要な用途に合わせて特定の処理に最適化したブロックを用意して組み合わせる。カメラやビデオでは映像処理に特化したプロセッサを用意し、ゲーム描画ではレンダリングエンジンを、汎用演算が多いアプリケーションでは汎用CPUを、サウンド処理ではDSPを、そして、データ通信にはモデムを組み合わせるが、Qualcommはスマートフォン向けプロセッサで長年にわたって数多くのヘテロアーキテクチャのプロセッサを開発してきた実績がある。これが、同社はモバイル技術を活用してIoTの進化を進めていくと主張し、かつ、IoTデバイスを開発する多くのメーカーがSnapdragonを採用する理由だ、とTalluri氏は訴えた。「QualcommはIoTに関連する技術革新に向けてこれまで培ってきたモバイル技術を投入する。そのために技術投資も進めていく」(Talluri氏)
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