Broadcom、2.5DとHBM2を採用したスイッチSoCを発表:10Tbpsのパケット処理性能
Broadcomは、HBM2と2.5次元(2.5D)構造を採用したスイッチSoC(System on Chip)「Jericho2」を発表した。最大10Tビット/秒(bps)のスループットを実現するという。
2.5DとHBM2を採用
Broadcomの最新のスイッチSoC(System on Chip)「Jericho2」には、HBM2メモリを備えた2.5次元(2.5D)チップスタックが搭載されている。このプロセッサは、メモリ帯域幅の増加を利用して、ハイエンドのスイッチやルーターに搭載されたASICの性能を大幅に高めるものである。
Broadcomが2018年3月6日(米国時間)に発表した同SoCは、16nmプロセスが適用されている。50Gビット/秒(bps)のPAM4 SerDesを208個搭載していて、総スループットは10Tbpsに達する他、400Gイーサネット(400GbE)のリンクを最大36個サポートするという。Jericho2は、通信コアネットワークや大規模データセンターでの400Gbpsの高速通信の実現に貢献すると、Broadcomは期待する。
HBM2技術を用いたJericho2のメモリ帯域幅は、Broadcomの前世代品となる28nmチップの外付けDRAMに比べて、約8倍に達する。数字だけで考えればNokiaのネットワーキングASIC「FP4」の性能を追い抜いたことになる。
Linley GroupのアナリストであるBob Wheeler氏は、「Jericho2は、HBMと2.5Dの採用によって、メモリのボトルネックを取り除く、次世代チップの“大物”といえるだろう」と評価した。
Jericho2は、Broadcomでは初めて2.5Dの構造を採用した商用チップである。Jericho2のマーケティングマネジャーを務めるOozie Parizer氏によると、同社は、ある顧客がJericho2に似た製品を機械学習ASICとして設計するのをサポートしたという。ただし、顧客名については伏せた。ちなみにIntelの「Nervana」には、Graphcoreという新興企業が開発したAIトレーニング用プロセッサが採用されているが、それが2.5Dだ。
2.5Dが高コストという特性は相変わらずだが、Broadcomは、Jericho2を投入することで、機器メーカーのシステムの価格が2018年末までに、400GbEポート当たり1000米ドルにまで下がると見込んでいる。
Parizer氏はメモリベンダーに対し、HBMスタックの価格を下げるよう求めている。同氏は「HBMは、ネットワーキングやハイエンドプロセッシングの未来である。HBMスタックの価格が下がれば、さらなるコモディティ化を促すことができる。当社のプロセッサの性能は、過去2年で5倍に進化したが、DRAMの進化とは足並みがそろっていないのが現状だ」と述べた。
Jericho2のサンプル出荷は既に始まっている。Broadcomは、今後9〜12カ月の間に量産を開始するとしている。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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