光送受信モジュールの技術開発ロードマップ:福田昭のデバイス通信(145) imecが語る最新のシリコンフォトニクス技術(5)(2/2 ページ)
今回は、実装技術と光送受信モジュール技術のロードマップを解説する。光送受信モジュールの高速化と広帯域化では、波長分割多重(WDM)技術が重要になってくる。
波長分割多重(WDM)技術によって光伝送の帯域を広げる
前回でも述べたように、単一チャンネル当たりの信号伝送速度は、50Gビット/秒(bps)(NRZ形式)〜100Gbps(PAM4形式)から、さらに上がる見込みがたっていない。このため、光送受信モジュールの高速化と広帯域化は、波長分割多重(WDM: Wavelength Division Multiplexing)技術によるチャンネル数の向上に頼ることになる。ここでチャンネル数とは、波長のわずかに違う複数の光信号を重ね合わせる数を意味する。
16nm/14nmのCMOSホストICを使う現行世代では、WDMのチャンネル数は4チャンネルである。100Gbpsのチャンネルを多重化することで400Gbpsの光ファイバー伝送を実現する。
10nmノードのCMOSホストICを使う次世代の光送受信モジュールでは、WDMのチャンネル数を8チャンネルに増やす。光ファイバー伝送の速度は800Gbpsに倍増する。そして7nmノードの次々世代では、WDMのチャンネル数を16チャンネルとさらに2倍に増やす。さらに将来の5nmノードでは、WDMのチャンネル数は32チャンネルに達する。
ただし、技術的な問題は山積している。1本の光ファイバーで32波長の光信号を伝送すると分散が問題になるし、そもそも、32波長を安定に出力する光源(半導体レーザー)を開発できるかどうかが怪しい。そこで光ファイバー(あるいは光伝送路)の本数を増やすことで帯域幅を広げ、WDMのチャンネル数の増加を抑えることも考えられている。
(次回に続く)
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