Armのジョイントベンチャー、中国で事業を開始:IPOと上場も検討か
中国が自国の半導体産業を強化し、海外技術への依存度の低下を目指す中、Armは2018年5月1日(英国時間)、同社傘下のジョイントベンチャー企業である中国Arm mini Chinaが、中国で技術ライセンスを供与する事業を始めたことを認めた。
Armの中国ジョイントベンチャー、IPOと上場も計画
中国が自国の半導体産業を強化し、海外技術への依存度の低下を目指す中、Armは2018年5月1日(英国時間)、同社傘下のジョイントベンチャー企業である中国Arm mini Chinaが、中国で技術ライセンスを供与する事業を始めたことを認めた。
Armは、イノベーションファンドのHOPU-Armを立ち上げた後の2017年2月、中国にジョイントベンチャーを設立する意向を明らかにしていた。当時Armは、中国の主要な政府系ファンド、投資機関、投資企業から提供された資金を元に、設立間もない中国の技術企業や新興企業に投資することで、IoT(モノのインターネット)、自動走行車、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、AI(人工知能)向けのアプリケーションの開発を加速させるという方針を示していた。
Nikkei Asian Reviewや中国のオンラインサイトであるThe Paperが伝えたところによると、Arm mini Chinaは既に中国・深センで正式に登記されており、株式の51%は中国系の投資家(Bank of ChinaやBaiduなど)、残りの49%はArmが所有しているようだ。これらの報道では、Arm mini Chinaが中国での新規株式公開(IPO)と上場を計画しており、中国の規制機関はそれを早急に承認する可能性があることも伝えられた。
EE Timesは、進展を詳しく説明してもらおうと、Armのシニアエグゼクティブにインタビューを申し込んだが、戻ってきたのは同社の報道担当者からの正式なコメントのみで、そこには「ジョイントベンチャーについては事実である」と書かれていた。なおArmからの返答には、中国の顧客によるArmチップの出荷数が、過去10年間で110倍以上に増加したことも記載されていた。
また、回答には、中国内でより多くの企業にArmの技術を利用してもらうには、中国のパートナーとの協力の下、Armチップに互換性があり、地元の中国市場でライセンスを供与できる技術を開発する必要があるとも書かれている。
さらに、「中国の組織は、全て中国企業によって開発された技術を得ることを望んでいる。ジョイントベンチャーの設立によって、Armベースの半導体IP(Intellectual Property)を中国国内のエコシステムに適合できるようになる。加えて、中国のパートナーはより広範な技術ポートフォリオを入手し、中国市場のニーズに応えられるようになる」と付け加えた。
エレクトロニクス業界の関係者の中には、Armは長年にわたり中国で事業を展開してきており、今後もこれまでと同じ形態を維持できたはずなので、今回の動きは必ずしも必要であったとはいえないとの見解を示している者もいる。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ArmのAI戦略、見え始めたシナリオ
機械学習についてなかなか動きを見せなかったArmだが、モバイルやエッジデバイスで機械学習を利用する機運が高まっているという背景を受け、少しずつ戦略のシナリオを見せ始めている。 - IoTデバイスに共通のセキュリティ基盤を、Arm「PSA」
Armは2035年に1兆台のデバイスがIoT(モノのインターネット)で接続する世界を目指す。しかし、膨大なデバイスが登場するということは膨大なベンダーが多種多様の異なる方法でArm IP(Intellectual Property)を実装することを意味する。そのような状況でも同等のセキュリティレベルを実現する共通プラットフォームについて、そのメリットを訴えた。 - Armの独壇場にはならない? AI向けコア市場
CPUコアにおいて、多くの分野で高いシェアを誇るArmだが、AI(人工知能)エンジン向けチップのコアでは、独壇場とはいかないようだ。 - “IoTの勝者 ARM”買収でソフトバンクが狙うもの
ソフトバンクグループが2016年7月18日、半導体設計用IPベンダー大手のARMを買収した。ソフトバンクとARMとは直接的な関係性はなく、買収による相乗効果は見えにくい。なぜ、ソフトバンクはARMを買収するのかを考えたい。 - ARM、AI開発専門のグループを設立
ARMは、機械学習(マシンラーニング)を専門に開発するグループを新たに設立することを発表した。 - ARMがもたらした“老舗コンサバ、新興アグレッシブ”の現状
ARMコアを使うことで、中国半導体メーカーも最新のCPUコアを用いたチップが作れるようになった。それは同時に、中国において、「老舗のメーカーは守りに入り、新興のメーカーに攻めに出る」という状況をもたらしている。