検索
連載

リーマンショックも影響? “蔵出しFPGA”の真相を探るこの10年で起こったこと、次の10年で起こること(25)(3/3 ページ)

前回に続き、2017年発売ながらチップに開発した年を意味する「2009」と刻まれていたIntel製FPGA「Cyclone 10 LP」を取り上げる。さらに多くのCycloneシリーズ製品のチップを観察し、2009年に開発されたチップであるという確証を探しつつ、なぜ2017年の発売に至ったのかをあらためて考察していく。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

お蔵入り&蔵出しの理由

 開発した2009年当時は、“帯に短し、たすきに長し”の仕様と判断され、お蔵入りになったのかもしれない。あるいは当時はシリコンの種類を増やすと、費用対効果が崩れ、種類を増やさない方向(設計まで完了もしくは量産前)で保留された可能性も考えられる。いずれにしても連番のコードをを持つシリコンが存在していたのだ。

 当時は、2つの製品を抜いても、価値が創出できた。しかし低消費電力と、小面積のFPGAが求められてきた中で、開発当時に販売されなかったチップが、日の目を見ることになったものだと考えられる。

 前回も書いたが、改めて各社のお蔵入りチップの中には、日の目を見なかったけれど、月日がたって価値が生まれたチップがあるだろう。ぜひ、蔵の中を見てみたいものである。

 思い起こせば、Cyclone 10 LPが開発された前後の2008〜2010年はまだスマホは登場直後でブレイクしていなかった。現在のトレンドとなっている人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)といったワードもほとんど流通していなかった。そして2008年に発生したリーマンショックの影響で、どの半導体メーカーも事業姿勢が慎重になっていた頃であり、開発済みのチップでさえも仕分けの対象となり、お蔵入りなどが起こった時期でもあった。

 8年ほどの歳月を経て日の目を見たCyclone 10 LPは、現在の市場が求める優れた仕様のチップである。まさにIoT時代の機器を最適化でき、帯に短し、たすきに長しをカバーできるチップだと思う(リーク電力の小ささやコスト競争力は十分な価値!!)。こうした優れたチップを蔵出しし、再利用を図れることは、新たに費用をかけずに市場を形成できる「評価すべきこと」だと捉えている。

 図1は、Intel(Altera)と双璧を成すFPGAメーカーであるXilinx製FPGAのチップの一例である。


図1:Xilinx製FPGAのチップ上の型名刻印(一例) (クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 テカナリエではXilinxのFPGAも開封、観察しているが、2010年以降のXilinxのチップには西暦情報が搭載されておらず、Intelのような「蔵出し事例」は確認できていない。いずれにせよ、今後もFPGAをジャンジャン観察し、さまざまな事象を探っていく。

「この10年で起こったこと、次の10年で起こること」連載バックナンバーは、こちら

筆者Profile

清水洋治(しみず ひろはる)/技術コンサルタント

 ルネサス エレクトロニクスや米国のスタートアップなど半導体メーカーにて2015年まで30年間にわたって半導体開発やマーケット活動に従事した。さまざまな応用の中で求められる半導体について、豊富な知見と経験を持っている。現在は、半導体、基板および、それらを搭載する電気製品、工業製品、装置類などの調査・解析、修復・再生などを手掛けるテカナリエの代表取締役兼上席アナリスト。テカナリエは設計コンサルタントや人材育成なども行っている。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る