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有機トランジスタで多値演算、フレキシブルデバイスに高集積化への糸口をつかむ

物質・材料研究機構(NIMS)国際ナノアーキテクトニクス研究拠点量子デバイス工学グループの若山裕グループリーダーと早川竜馬主任研究員らによる研究グループは2018年7月、有機トランジスタを使った多値論理演算回路の開発に成功したと発表した。

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 物質・材料研究機構(NIMS)国際ナノアーキテクトニクス研究拠点量子デバイス工学グループの若山裕グループリーダーと早川竜馬主任研究員らによる研究グループは2018年7月、有機トランジスタを使った多値論理演算回路の開発に成功したと発表した。有機エレクトロニクスの高集積化を可能にする技術とし、フレキシブルエレクトロニクスの新しい可能性が開けたとみている。

2種類の有機トランジスタを組み合わせ

 研究グループは、「アンチ・アンバイポーラトランジスタ」と呼ばれる特殊なトランジスタを開発した。ゲート電圧をある一定以上に増加させるとドレイン電流が減少するという特性を示す。このアンチ・アンバイポーラトランジスタと通常のn型トランジスタを組み合わせる素子構造を開発した。この時に、アンチ・アンバイポーラトランジスタの中心に、p型とn型の有機半導体を接合したpnヘテロ界面が形成されていることがポイントだという。


左が素子構造と有機半導体の分子構造、右はその等価回路 (クリックで拡大) 出典:NIMS

 開発した素子は、ゲート電圧が小さい場合、アンチ・アンバイポーラトランジスタに多くの電流が流れる。ゲート電圧を大きくすると、ある電圧範囲ではアンチ・アンバイポーラトランジスタと通常のn型トランジスタに同等の電流が流れる。ゲート電圧をさらに大きくすると、アンチ・アンバイポーラトランジスタに流れる電流は少なくなるという。

 電圧の増加により電流値が減少する特性は、既に「負性抵抗」として知られている。今回は、有機トランジスタを用いて、電流の増減を制御することに成功した。しかも、電流の増減幅は室温で1000倍も変移するという。具体的には、入力値(VIN)を変化させていくと、アンチ・アンバイポーラトランジスタとn型トランジスタに流れるドレイン電流(ID)が大きく変移。中央の電極で測定される出力値(VOUT)は3値(0、1/2、1)に変移するため、多値スイッチングが可能だという。

 この技術を応用することで、複数の出力値を制御する多値理論演算回路の開発が可能となる。しかも、これまでのトランジスタと同じ素子サイズであっても、集積度やデータ処理能力を大幅に向上させることができるという。


左はアンチ・アンバイポーラトランジスタの電流特性(青線)とn型トランジスタの電流特性(赤線)。右は入力(VIN)−出力(VOUT)特性のグラフ (クリックで拡大) 出典:NIMS

 開発したトランジスタは、簡便な真空成膜法で作製できることも特長だ。チャネルの長さや幅といった素子構造、電極やゲート絶縁膜の材料などを自由に変えることができる。このため、電圧を2桁以上も低減することや、駆動電圧を0.1V単位で変更することなどが可能となる。

 研究グループは今後、柔らかさと高いデータ処理能力を両立させた新しい有機トランジスタの開発に取り組む計画である。

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