パワエレで力を付ける中国、SiCで目立つ地元企業の台頭:PCIM Asia 2018(5/5 ページ)
中国・上海で、2018年6月26〜28日の3日間にわたりパワーエレクトロニクスの展示会「PCIM Asia 2018」が開催された。三菱電機の中国法人は「5〜10年前では考えられないほど市場が伸びて、プレイヤーも増えてきている」と語る。SiC(シリコンカーバイド)パワーデバイスを手掛けるメーカーも増えてきた。PCIM Asia 2018の様子をレポートする。
SiCの本格的な置き換えは2025年以降か
パワーエレクトロニクス関連の研究開発プロジェクトを手掛ける欧州の団体ECPEのプレジデントであり、PCIM Asia 2018の顧問委員会でチェアマンを務めるLeo Lorenz氏は、EE Times Japanのインタビューに対し、「これはあくまで個人としての予測だが、SiパワーデバイスからSiCパワーデバイスの本格的な置き換えが始まるのは、2025年以降になるだろう」と語る。「新しい技術が普及するには、大量生産されるアプリケーションでの採用が不可欠だ。SiCパワーデバイスについては、そうした用途の1つが、EVだと期待されている。2025年以降に本格的な置き換えが始まり、2035年には、パワーデバイスの約30%がSiCパワーデバイスになるのではないかとみている」(Lorenz氏)
Lorenz氏は、「Siパワーデバイスも年々、驚くほどの進化を続けている。効率の向上は、パワーデバイスそのものの進化と、回路トポロジーの進化の両方にとって実現されるが、そのどちらも進歩している。パワーエレクトロニクス市場の成長予測率は、半導体市場のそれよりも上回っており、それだけ成長が期待される分野である」と続けた。
PCIM Asia 2018の約3週間前に、ドイツ・ニュルンベルクで開催された「PCIM Europe」(2018年6月5〜7日)は、今回で40周年を迎えた。27カ国から506社が出展し、1万人を超える来場者が参加した。Lorenz氏は、「PCIM Europeに比べれば、PCIM Asiaの規模は小さいが、“実用化を念頭に置いた、アプリケーション指向の製品を展示する”というPCIMの方針は踏襲している」と述べる。Lorenz氏は、「政府の方針で、新エネルギーやEVに注力する中国市場は、パワーエレクトロニクスに携わる多くのメーカーにとって魅力的な市場だろう」としながらも、「ただ、PCIM Asiaは、まだPCIM Europeほど、“開かれた展示会”ではないと、個人的には感じている。中国向けではなく、より国際的な展示会にするために、英語でのセミナーやカンファレンスを増やしているが、まだ十分とはいえない」との課題についても触れた。
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