ワイヤレス給電市場、2018年は前年比42%増加:矢野経済研究所が調査
ワイヤレス給電(受電モジュール、受電機器)の世界市場は、2018年に1741億5000万円規模となる見通しだ。スマートフォン向けが需要をけん引する。
将来はEVや産業機器などの用途にも期待
矢野経済研究所は2018年8月、ワイヤレス給電(受電モジュール、受電機器)の世界市場(メーカーの出荷金額ベース)を調査し、2018年は1741億5000万円規模に達するとの予測を発表した。2017年に比べて42.4%の増加となる。
ワイヤレス給電は、電磁誘導や電界結合、磁界共鳴、マイクロ波といった方式による、接点を設けない給電システムである。調査は、ワイヤレス給電の部品メーカーや機器メーカー、ユーザー企業などを対象とし、2018年3〜7月に行った。
ワイヤレス給電システムを初めて搭載したスマートフォンは2011年に発売された。当時は、ワイヤレス充電の環境が十分に整っていなかったことなどもあり、広く普及するまでには至らなかった。一気に市場が拡大したのは2015年。同機能を搭載したSamsung Electronics製「Galaxy S6」が登場したことで、ワイヤレス給電の利点が広まり、認知度も高まった。
給電を行うための規格も複数登場した。現在ではWPC(Wireless Power Consortium)のQi規格がスマートフォンで広く採用されるなど、主流になりつつある。2017年にはAppleがWPCメンバーに加わったこともあり、家具など異業種からも参入が相次いでいるという。
ワイヤレス給電システムの市場をけん引するのはスマートフォンなど小型電子機器である。これに加え、EVや産業機器など新たな用途でも成長を遂げている。2017年のワイヤレス給電市場は、1223億1000万円となった。2018年は前年比42.4%増と大きく伸長する見通しだが、それ以降はスマートフォン向け需要が一段落し、伸び率が鈍化すると予想した。
2019年のワイヤレス給電世界市場は、前年比26.2%増の2197億円、2020年には同8.6%増の2385億円と予測した。その後は、スマートフォン以外の新たなアプリケーションも登場するとみられ、2023年には3590億円の市場規模を見込んでいる。
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