「Cortex-M33」を採用した無線SoC、Bluetooth 5.1に対応:Dialogの「SmartBond」
Dialog Semiconductorは、組み込み技術の国際展示会「embedded world 2019」で、Bluetooth Low Energy(BLE)向けワイヤレスコントローラーSoC(System on Chip)「SmartBond」の新製品として、Bluetooth 5.1に対応した「SmartBond DA1469x(以下、DA1469x)」を発表した。
Dialog Semiconductorは、組み込み技術の国際展示会「embedded world 2019」(2019年2月26〜28日、ドイツ・ニュルンベルク)で、Bluetooth Low Energy(BLE)向けワイヤレスコントローラーSoC(System on Chip)「SmartBond」の新製品として、Bluetooth 5.1に対応した「SmartBond DA1469x(以下、DA1469x)」を発表した。
DA1469xは、Armの「Cortex-M33」コアと「Cortex-M0+」コアの他、マイクロDSP、モデム、メモリ、各種インタフェースなどを1チップに収めたSoCである。Bluetooth 5.1は2019年1月に発表されたばかりで、方向検知の機能が追加されている(関連記事:「Bluetooth、センチメートル精度の測位も可能に」)。
「Cortex-M33」を採用
DA1469xの特長は大きく2つある。一つは、Cortex-M33を採用している点だ。Cortex-M33は、Armの命令セット「Armv8-M」を実装したIP(Intellectual Property)で、IoT(モノのインターネット)用途向けに、セキュリティ機能を統合している。Dialog SemiconductorでInternational Product Marketing Managerを務めるErik Peters氏は、「Cortex-M33は『Cortex-M4』よりも効率がよく、性能も高い。DA1469xはワイヤレスコントローラーICとしてCortex-M33を採用した世界初の製品だ」と述べている。
もう一つがマルチコアという点だ。既存のSmartBondには、Cortex-M0コアしか搭載されていない。DA1469xは、Cortex-M33コアを追加し、マルチコア化したSmartBondの最初のファミリーとなる。
Peters氏は「IoTなど既存のワイヤレスアプリケーションの多くは、センサーでデータを収集し、それを処理して、クラウドやスマートフォンなどに無線送信するというものだ。そこでDA1469xファミリーでは、センサー、処理、送信という3つの過程それぞれのタスクを割り振るために、マルチコア化した」と説明する。
センサーの部分では、超低消費電力のマイクロDSPによってセンサーデータを収集し、メモリに一時的に保存しておく。それらのデータを処理するアプリケーションプロセッサとしての役割はCortex-M33が担う。Bluetooth Low Energy送信を行うMACには、Cortex-M0+が搭載されている。MACはソフトウェアによる設定が可能で、Bluetooth 5.1以降に対しても、ソフトウェアをアップグレードするだけで、チップを変更せずに最新のBluetooth規格に対応できるようになる。
Peters氏は「当社はBluetooth SIG(Special Interest Group)のメンバーなので、規格については2世代先の情報まで手に入る。常に最新のBluetooth規格に対応できるようにしていく」と語った。
さらに、DA1469xには、Dialog Semiconductorが設計したパワーマネジメントユニットが集積されていて、それぞれのプロセッサコアを必要な時にだけ駆動するよう、細かく制御する。外付けのPMIC(パワーマネジメントIC)を追加する必要がないので、基板面積とコストを低減することが可能だ。
DA1469xファミリーは、55nmのCMOS/ミックスドシグナルプロセスで製造される。既に量産を開始していて、SDK(ソフトウェア開発キット)やハードウェア開発キットなども入手可能だ。
Peters氏によれば、DA1469xは、車載への展開も予定しているという。車載バージョンは動作温度範囲が105℃までとなる。2019年第4四半期の提供開始を目指している。
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