欧米製から“自前”へ、通信チップにも進出し始めた中国:製品分解で探るアジアの新トレンド(37)(3/3 ページ)
以前は主に欧米製のチップが採用されていた、Wi-FiやBluetoothなどの通信チップ。最近は、優れた通信チップを設計、製造する中国メーカーも増えている。
信号処理から通信までを一括処理
図3は香港メーカーの通信機能付きドアフォンである。スマートフォンで操作したり、画像を見たりすることができる多機能カメラだ。図3に、内部の部品一式を取り出した様子を示す。通信用アンテナ、スイッチ、カメラ、処理基板の4点で構成されている。カメラセンサーから取り込んだデータをカメラプロセッサで処理し、Wi-Fiでスマートフォンや外部端末に送信する仕組みになっている。
図4はWi-Fi通信チップの外観と、チップ開封を行いチップ上のロゴマークを拡大撮影したもの。メインのカメラプロセッサとWi-Fi通信チップは、ともに、中国Huawei傘下のHiSiliconのチップを採用している。
つまり、セットとして活用しているのである。信号処理から通信までを一括処理するわけだ。監視カメラ、ドライブレコ―ダー、アクションカメラなどにも、このままの構成で展開することが可能になっている
数年前まで中国はWi-Fi、Bluetoothチップを欧米から調達してまかなってきた。しかし今回報告したように、中国メーカーのチップが出そろい、自前化、セット化が著しく進んでいる。Wi-Fi、Bluetoothだけでなく、GNSSレシーバー、NFC通信、NB(Narrow Band)-IoT、LoRaWANなどにも中国チップが進出し始めている。
図5は、HiSiliconのWi-Fi、Bluetooth対応チップ群のパッケージの様子とチップ開封の一部である。続々とラインアップを拡充し、先端スマホやガジェット、カメラ、応用製品での実績採用が広がっている。IEEE 802.11acからBluetooth 5.0までがラインアップされる(現状の最先端)。
通信関連技術については、どうしても5G(第5世代移動通信)が話題の中心となってしまうが、5Gばかりでなく、ローカル通信から広域通信も含め、通信システムに中国の技術は確実に広がっている。エッジ通信においても、今回報告したように新たな実績が日々積み上がっているのである。
2019年はさらに多くの実績が積みあがっていくはずだ。今後も目が離せない。
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