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低電流密度でも高い発光効率のGaNマイクロLED中性粒子ビームエッチングで実現

産業技術総合研究所(産総研)と東北大学は、低電流密度でも発光効率を維持できるGaN(窒化ガリウム)マイクロLEDを開発した。

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解像度2000ppi以上のディスプレイも可能に

 産業技術総合研究所(産総研)と東北大学は2019年7月、低い電流密度でも発光効率を維持できるGaN(窒化ガリウム)マイクロLEDを開発したと発表した。試作したGaNマイクロLEDは6μm角と小さく、これを高密度に配置すると、高効率で高解像度のマイクロLEDディスプレイを実現できる。

 今回の研究成果は、産総研窒化物半導体先進デバイスオープンイノベーションラボラトリGaN光デバイスチームの王学論ラボチーム長、電子光技術研究部門の朱俊元客員研究員、ナノエレクトロニクス研究部門の遠藤和彦研究グループ長らと、東北大学流体科学研究所未到エネルギー研究センター長で材料科学高等研究所主任研究者の寒川誠二教授兼産総研ナノエレクトロニクス研究部門特定フェローらによるものである。

 マイクロLEDは、ウェアラブル機器などに向けた表示素子として注目されている。ところが、誘導結合プラズマ(ICP)エッチング技術を用いる一般的な製造プロセスだと、プラズマの影響でLED側面に欠陥が生じる。特に、LEDのサイズが小さくなればなるほど、欠陥のある側面の比率は高まる。この結果、20A/cm2以下の電流密度領域では、発光効率が急激に低下するという。

 そこで今回、中性粒子ビームエッチング技術を用いて、GaNナノ構造のLED作製に取り組む産総研と、半導体材料を超低損傷でエッチングできる中性粒子ビームエッチング技術を開発する東北大学が協力し、GaNマイクロLEDの開発を行った。

 研究グループは今回、中性粒子ビームエッチング技術と従来のICPエッチング技術を用いて、サイズの異なる4種類(40μm角、20μm角、10μm角、6μm角)のGaNマイクロLEDをそれぞれ作製した。


作製したGaNマイクロLEDの模式図 出典:産総研、東北大学

 試作したマイクロLEDについて、発光効率を示す指標の1つである外部量子効率と電流密度の依存性を調べた。この結果、ICPエッチング技術で作製したマイクロLEDは、サイズが20μm以下になると、20A/cm2以下の電流密度領域で、発光効率が急激に低下した。これに対し、中性粒子ビームエッチング技術で作製したマイクロLEDは、6μmまでサイズを小さくしても、発光効率はほとんど低下しないことが分かった。


ICPエッチング技術(左)と中性粒子ビームエッチング技術(右)でそれぞれ作製したマイクロLEDの外部量子効率と電流密度の依存性 出典:産総研、東北大学

新たな技術と従来技術で作製したGaNマイクロLEDにおける発光効率の比較 出典:産総研、東北大学

 さらに、6μmのマイクロLEDについて、電流密度5A/cm2における発光効率を比較した。この結果、中性粒子ビームエッチング技術で作製した製品は、ICPエッチング技術で作製したものより約5倍も高い数値を示した。

 6μmのマイクロLEDを用いると、ディスプレイの解像度は2000ピクセル/インチ以上となり、仮想現実/拡張現実用ヘッドマウントディスプレイなどへの応用が可能となる。

 マイクロLEDディスプレイは、従来の液晶や有機ELディスプレイに比べて消費電力は10分の1以下、輝度は1万倍以上、解像度は約10倍を実現できるという。今回開発したマイクロLEDの発光色は青色である。今後、緑色や赤色のマイクロLEDを作製し、フルカラーのマイクロLEDディスプレイを実現する計画だ。

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