ペロブスカイト半導体の発光量子効率を計測:全方位フォトルミネセンス法で
東北大学は、全方位フォトルミネセンス(ODPL)法を用いて、ハライド系有機−無機ハイブリッド型ペロブスカイト半導体の発光量子効率(IQE)を計測することに成功した。この結果、IQEはメチルアンモニウムイオンの過不足によって大きく変動することが分かった。
メチルアンモニウムイオンの過不足がIQEに影響
東北大学は2019年8月、全方位フォトルミネセンス(ODPL)法を用いて、ハライド系有機−無機ハイブリッド型ペロブスカイト半導体(CH3NH3PbBr3)の発光量子効率(IQE)を計測することに成功したと発表した。この結果、IQEはメチルアンモニウム(CH3NH3)イオンの過不足によって大きく変動することが分かった。
今回の研究成果は、東北大学多元物質科学研究所の小島一信准教授、秩父重英教授および、浜松ホトニクスの池村賢一郎氏、千葉大学大学院融合理工学府の松森航平氏、同大学大学院理学研究院の山田泰裕准教授、京都大学化学研究所の金光義彦教授らによるものである。
結晶欠陥が生じにくい半導体材料の1つである「ハロゲン化金属ペロブスカイト」は、高い変換効率が得られるため、太陽電池の材料として注目されている。電気を光に変換するLED素子でも、ペロブスカイト半導体の応用が期待されている。
LEDの性能をさらに向上させていくには、結晶品質を示すIQEなどを正確に評価する必要がある。ただ、これまで行われてきた一般的な発光分光計測方法だと、結晶の上方へ放射された光強度だけを検出することになり、効率測定として十分ではなかったという。
結晶の基礎吸収端エネルギーと呼ばれる2.21V電子ボルトより、大きなエネルギー領域と小さなエネルギー領域では、結晶から放出される光の方向が異なる。大きなエネルギー領域では、結晶の上方のみ放射され、その放射パターンや結晶から光が脱出する確率は結晶と空気の屈折率で決まる。これに対し小さなエネルギー領域では、結晶のあらゆる位置から放射され、その放射パターンや結晶から光が脱出する確率は、結晶の形状やサイズにも依存するという。
そこで小島氏らは今回、結晶の上方に放射された光を検出する方法と、全方位に放射された光を検出する方法を組み合わせた、ODPL計測法を用いることでIQEの計測に成功した。
これらの測定結果から、CH3NH3PbBr3のIQEは、最低62.5%に達することが分かった。しかも、CH3NH3イオンの過不足が、IQEの変動に大きく影響していることを明らかにした。
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