IGBTとIPM主軸に売上高2000億円超へ、大型投資も実施:三菱電機 執行役員半導体・デバイス第一事業部長 山崎大樹氏(2/2 ページ)
人口増加や経済成長、テクノロジーの発展に伴って世界のエネルギー消費量が増加を続けるなか、省エネ化/低炭素社会のキーデバイスとなるパワー半導体に注目が集まっている。今回、IGBTをはじめとするパワー半導体の主要メーカー、三菱電機の執行役員、半導体・デバイス第一事業部長、山崎大樹氏に話を聞いた。
――パワー半導体事業の戦略について説明してください。
主力製品はIGBTとIPM(インテリジェントパワーモジュール)となるが、IGBTモジュールについては、差別化戦略としてはチップとパッケージが重要な要素になるので、高効率チップ開発と市場ニーズにマッチしたパッケージ開発の両輪で優位性を発揮しようとしている。その上で、SiC(炭化ケイ素)パワーデバイスを次の開発戦略の軸に据えている。
われわれのIGBTモジュールの展開市場は、その大部分を産業用途のサーボ向けや、インバーター向けが占めているが、近年、再生可能エネルギー分野も活況だ。太陽光発電や風力発電の送電系に関するパワーコンディショナーや蓄電池の成長が顕著であり、かなり重点を置いて取り組んでいる。また、産業機器の高度化の流れの中で革新的な開発に取り組む顧客が多いこともあり、われわれは幅広くサポートしている。
2025年までという目線に立てば、当社の主力であるIGBTモジュール全体の伸びを大きくけん引するのは自動車であり、年間成長率10%以上の勢いを持つと考えている。われわれには社内外含め、もともとxEVへの参入が早かった日系メーカーとの長い間ともにビジネスを進めてきた経験がある。その中で培ってきた技術力、品質、サポート力をベースに海外市場に本格的に展開していく。その戦略として標準的なIGBTモジュールを主軸に据えるということで、(自動車用IGBTモジュール製品)「J1シリーズ」を分野の拡大を進めているところだ。
さらに、三菱電機内のビジネスユニットにパワーデバイスを供給するという役目もある。社内向けの割合はパワーデバイス事業の10%程度ではあるが、戦略製品の開発に初期から取り組んでいくということで力の源泉を得られているし、社外の顧客との付き合いから、相乗効果を生んで強みを拡大していくことができる。三菱電機は独立の研究所があることも大きく、その技術力を利用しながら製品戦略を進めている。
IPMについては、民生向けで非常高いシェアを獲得している。特に、パワー素子だけでなく駆動用ICとして高耐圧IC(HVIC)を搭載した「DIPIPM」に注力しており、家庭用のエアコン向けに好調だ。また、自動車向けでは、電動自動車のカーエアコン向けとしてIPMの需要も出ている。
――SiC製品の展開についてはいかがでしょう。
現在SiCのディスクリート製品は電源用途としての市場は広がっている。われわれも一部ディスクリート製品については製品展開をしているが、フォーカスしているのはやはりモジュールであり、今後モジュール用途が大きく伸びるということを期待している。
足元では、電鉄系のモジュールで活発に採用が進んでおり、次の段階として自動車分野にどれだけSiCモジュールが採用されるかというのが最も注目すべきところだ。具体的には読み切れていない所があるが、われわれは2025年前後のタイミングで採用が具体化していくと期待している。差別化については、高性能低コストということでトレンチ型MOSFETを立ち上げていき、SBD内蔵のMOSFETで小型化、低コスト化を行う、というのが2つの基本戦略だ。
6インチ製品の製造ラインについては一定程度の能力は確保できているので、装置流用で対応できる範囲だ。次に爆発的にSiCの需要が伸びた際には、事業全体のなかで生産構造をうまく調整していくということになると思う。ウエハー調達については現在、海外の先行メーカーが強くそこが主軸になると思うが、いろいろなサプライヤーが取り組みを進めているので、われわれも選択肢を広げていきたいと考えている。
――最後に、事業への思いを聞かせてください。
パワーデバイスは非常に先の楽しみな事業だ。夢のある事業に取り組んでいる顧客ばかりで、社会インフラに対する貢献も非常に大きく、顧客とともにグローバルに社会貢献する立場を担っていけることを期待している。現在、われわれは重要な局面にあり、的確な施策展開を行っていきたい。
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