酸窒化物単結晶を用い、強誘電性を初めて実証:北海道大学と東京工業大学
北海道大学と東京工業大学の研究グループは、酸窒化物ペロブスカイトBaTaO2N単結晶が強誘電体であることを実証した。
最大3.1μm角のBaTaO2N単結晶を合成
北海道大学と東京工業大学の研究グループは2019年12月、酸窒化物ペロブスカイトBaTaO2N単結晶が強誘電体であることを実証したと発表した。
今回の研究成果は、北海道大学大学院工学研究院の鱒渕友治准教授や樋口幹雄准教授、吉川信一名誉教授、同総合化学院博士後期課程の細野新氏や同理学研究院の武貞正樹准教授および、東京工業大学科学技術創成研究院フロンティア材料研究所の安井伸太郎助教と伊藤満教授らの研究グループによるものである。
今回の研究では、細野氏らが発見したBaCN2を結晶成長のフラックスとして用いた。融点が900℃付近にあり、酸窒化物ペロブスカイトのフラックスとして機能することが分かったためだ。このBaCN2をBaTaO2Nと混合し、加熱と徐冷を行うことで、形状が最大3.1μm角のBaTaO2N単結晶を合成した。
透過型電子顕微鏡を用い、得られたBaTaO2N粒子の内部を観察し、ペロブスカイト型構造の単結晶であることを確認したという。この要因はBaCN2にBaTaO2Nが溶解し、冷却過程で再結晶をしたためとみている。
次に、BaTaO2N単結晶粒子の上下面に電極を設け、圧電応答顕微鏡で電圧を印加した。そうしたところ、印加電圧を100Vにしても電流はリークせず、BaTaO2Nが極めて高い電気抵抗を有することが分かった。しかも、電圧を変化させると、分極反転を伴う圧電応答が確認されるなど、Polar Nano Regions(PNRs:常誘電領域内部に生じるナノメートルスケールの分極領域)に由来する強誘電体であることが初めて実証されたという。
今回の成果について研究グループは、「複数の陰イオンが共存することによって、無機物にPNRs由来の強誘電性を導入できることを示すことができた」として、新たな強誘電体材料開発につながるとみている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 北大、新しい柔粘性/強誘電性結晶を開発
北海道大学大学院理学研究院の原田潤准教授らによる研究グループは、小さい電場で分極反転が可能な、新しい柔粘性/強誘電性結晶を開発した。 - 情報記憶素子用材料の電気化学酸化反応を可視化
北海道大学と釜山大学校の研究グループは、次世代情報記憶素子用材料として期待される、コバルト酸ストロンチウム薄膜の電気化学酸化反応を可視化することに成功した。 - デジタルアニーラ活用、磁石の磁束密度を最大化
富士通研究所は、組み合わせ最適化問題を高速に解くことができるアーキテクチャ「デジタルアニーラ」を活用し、発電効率に優れた磁気デバイスを設計するための技術を開発した。 - 東工大、電子輸送型有機半導体高分子を合成
東京工業大学は、直接アリール化重縮合法を用いて、電子輸送型(n型)の有機半導体高分子の合成に成功した。作製した高分子トランジスタは、室温大気環境で長期保存しても性能が安定しているという。 - ペロブスカイト太陽電池、放置して発電効率向上
東京工業大学物質理工学院応用化学系の脇慶子准教授らは2019年10月、ペロブスカイト太陽電池を作製した時に、初期特性が安定しなくても常温常圧のまま放置するだけで、発電効率が向上する技術を開発した。 - 東工大、低電圧高輝度のペロブスカイトLED開発
東京工業大学は、ペロブスカイト型ハロゲン化物を用い、低電圧駆動で極めて輝度の高いペロブスカイトLED(PeLED)を開発した。