自動車用センサーの技術動向(後編):福田昭のデバイス通信(238) 2019年度版実装技術ロードマップ(48)(2/2 ページ)
自動車用センサーの後編では、超音波センサー、LiDAR、内装(インテリア)用センサーを取り上げ、それぞれの仕組みと用途を紹介する。
自動運転の高度化を支援するLiDAR(ライダー)
「LiDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)」は、車両の周囲に光を照射して反射光を検出することで、周囲に存在する物体との距離を検出するとともに、物体の3次元形状を認識するセンシングシステムである。距離および形状の検出は、光を照射してから反射光を受け取るまでの時間を測定して換算する。時間測定という点では超音波ソナーと似ている。光源には波長905nmあるいは1550nmの近赤外線レーザーが使われる。
LiDAR(ライダー)の特長は、遠方および周辺の物体を一括して検出できることにある。このため、レベル3以上の高度な自動運転システムにはLiDARの搭載が不可欠だとされる。
LiDAR(ライダー)には大別すると、走査(スキャン)型と非走査(一括照射)型がある。走査型はさらに、可動部がある方式と可動部を持たない方式に分かれる。また別の分類方法として、機械的な駆動部があるメカ方式と、機械的な駆動部を持たないメカレス方式がある。
最初に自動車が搭載したLiDARの方式は「スピニング方式」である。ポリゴン(多面体)ミラーをモーターで回転させることによってレーザー光を走査する。レベル3相当の自動運転システムを装備した高級自動車で実用化されている(参考記事:「未来のモビリティーを支える自動運転システム」)。
スピニング方式の欠点は、コストが高いことだ。性能を維持しつつもコストを低減させたLiDARが望まれている。MEMSミラーでレーザー光を走査する方式や、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)を光源とする一括照射(フラッシュ)方式などに期待がかけられている。
居眠り運転を防ぐ内装(インテリア)用センサー
「内装(インテリア)用センサー」は、そのままでは分かりにくい。理解しやすく言い換えると、「運転者監視システム(DMS:Driver Monitoring Systems)」用のセンサーのことだ。運転者が居眠りしたり、注意力が低下したりした状態を検知して運転者に警告を発する。最も一般的なDMS用センサーは、赤外線カメラである。インテリアではないが、ステアリング(ハンドル)の舵角をモニターして車両のふらつきを検知するタイプのDMS用センサーもある。
レベル3以上の自動運転システムでは、運転者が運転に関わっていない状態(ハンドルから手を話している状態)から、システムが運転者に手動運転を要求することがある。このとき運転者は素早く手動運転に戻らなければならない。ただし運転者が常に手動運転にすぐに戻れる状態とは限らない。そこで、あらかじめ運転者の状態を監視しておくことで、システムが手動運転への復帰要求を出せるかどうかを判断する。
このような高度なDMSには、3次元認識が可能な高分解能赤外線カメラと、頭部や眼球などの動きを解析するサブシステムが必要とされる。頭部と眼球の動きを解析することで、運転者が眠気を自覚する前の段階(数分前)で、異常を検知する。
(次回に続く)
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