連載
代表的なMEMSセンサーとその応用(後編):福田昭のデバイス通信(241) 2019年度版実装技術ロードマップ(51)(2/2 ページ)
MEMSセンサーを前後編で紹介している。後編となる今回は、圧力センサーと傾斜センサーについて解説する。
自動車のヘッドライトを進化させる傾斜センサー
傾斜センサーは角度センサー、スロープセンサー、インクリノメーターなどと呼ばれ、被測定物の傾き(水平を基準とする角度)を測定するセンサーである。従来普及してきた傾斜センサーは、液体を使った静電容量方式だ。液体の表面が常に水平を維持することを利用し、液体容器の傾きを静電容量の変化として検出する。
最も単純な傾斜センサーは、傾きがないこと、すなわち水平であることを確認する「水準器(水平器)」だろう。気泡を内蔵した黄色い液体(アルコール)をガラス管に封入した水準器は、広く普及している。
MEMS技術による傾斜センサーは、出力特性が対称な2個のMEMS加速度センサーとASICダイを組み合わせたものが多い。被測定物が傾くと重力加速度によって2個の加速度センサーの出力に差分が生じる。この差分から傾斜角を算出する。小型・軽量・薄型である、製造コストが低いといった特長を備える。
MEMS傾斜センサーの例。村田製作所が開発した3軸傾斜センサー「SCL3300シリーズ」。外形寸法は7.6mm×8.6mm×3.3mm。使用温度範囲はマイナス40℃〜プラス125℃。3軸のMEMS加速度センサーとASICを内蔵した。出典:村田製作所の2019年1月11日付ニュースリリースから。なおこの図面は実装技術ロードマップには掲載されていない
MEMS傾斜センサーの用途には、自動車ヘッドライトの照射角自動調整、建築構造物の老朽化検出、リフトやクレーンなどの傾き検出、林業機械と建設機械の荷台水平維持、電子天びんの傾き補正、などがある。
(次回に続く)
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