2019年度売上高と営業利益が過去最高、太陽誘電:2020年度通期見通しは出せず(3/3 ページ)
太陽誘電は2020年5月12日、2020年3月期(2019年度)通期決算を発表した。2019年度売上高は、前期比2.9%増の2823億2900万円、営業利益は同5.5%増の371億7600万円、経常利益は同2.4%増の351億6500万円で増収増益となった。売上高、営業利益はともに過去最高を更新した。
「時期はずれても、5G、クルマの電装化は間違いない」
同社は、2020年度を最終年度とする中期経営計画で、売上高3000億円、営業利益率15%という目標を掲げてきた。今回、通期業績予想の公表を見送る形となったが、同社社長の登坂正一氏は、「足元の厳しい状況ではあるものの、5G(第5世代移動通信)や自動車の電装化の基本的な方向は止まることはない。時期がずれるということはあるが、事態の正常化と需要の回復の後に、電子部品需要にしっかり対応できるように取り組みを進め、目標を達成したい」と述べた。
注力市場とする自動車、情報インフラ/産業機器市場の2市場の売り上げ構成比を50%とする目標については、2019年度には41%を達成したことを紹介。「この2市場は需要変動の影響が比較的少なく、持続的成長が見込まれる」と語り、引き続き構成比を高めていくとした。
さらに材料技術、積層技術を中心とした製品展開を進める方針としては、主力のMLCC以外にも、「特にこれからはメタル系材料を使った積層タイプのインダクターに期待できる。これは当社独自の製品であり、5Gスマートフォンへの採用が今後さらに進むと考えている」(登坂氏)と説明。このほか、ウェアラブル市場向けの全固体電池やアクチュエータも、デジタルトランスフォーメーションおよび5Gなどによる需要の拡大を狙っていくとしている。
また以前から継続しているIoTとビッグデータを駆使してモノづくりを進化させる「smart.Eプロジェクト」については、福島太陽誘電の台風被害やCOVID-19の影響などに触れ、「より強固な分散生産体制が求められている。当社は拠点配置は分散できているが、生産性を維持しながら同一アイテムを複数拠点で生産する、どこかの拠点が停止した時には生産アイテムを迅速にシフトするなど不測の事態にも対応するスピード感を大切にしていく」と説明。さらに登坂氏は、「COVID-19収束後も今後、同じような問題は起こると考えている。そういった観点から、在庫戦略やロボットの有効活用など、smart.Eプロジェクトをさらに進化させることが重要だ」と語った。
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