パナソニック、バッテリーマネジメント技術を開発:稼働中に交流インピーダンスを測定
パナソニック インダストリアルソリューションズ社は、機器に搭載したままでリチウムイオン電池の残存価値を評価できるバッテリーマネジメント技術を、立命館大学理工学部福井研究室と共同で開発した。
リチウムイオン電池の残存価値評価に有効
パナソニック インダストリアルソリューションズ社は2019年11月、立命館大学理工学部福井研究室と共同で、機器に搭載したままでリチウムイオン電池の残存価値を評価できるバッテリーマネジメント(BM)技術を開発したと発表した。
多数のリチウムイオン電池セルを直列に接続したバッテリーモジュールは、電気自動車(EV)や大容量蓄電池を始め、さまざまな用途で需要拡大が期待されている。このバッテリーモジュールを安全に使用するための重要な技術の1つが、バッテリーマネジメントシステムである。各電池セルの電圧をモニターし、そのバランスをとるための制御を行う。さらに、充電率や容量維持率を計算し、使用可能な残り時間や航続距離などを割り出すことができる。
パナソニックが今回開発したBMICテストチップには、これら従来の機能に加え、交流インピーダンスを測定する機能を新たに搭載した。交流重畳法と呼ばれる測定方法を用いることで、電池を稼働させた状態でも交流インピーダンスを測定できるのが特長だ。交流インピーダンス測定法はこれまで、専用の測定器と電池を一定温度に保つための大型恒温槽を用意して、その中で電池を1個ずつ計測していたが、こうした設備を不要にした。
BMICテストチップは、15個の完全並列アナログ/デジタル変換器と0.1Hz〜5kHzのパルス変調による交流重畳回路、複素電圧・複素電流変換回路などを集積している。このため、既に実装されているバッテリーマネジメントシステムの構成を大幅に変更することなく、BMICを交換するだけで稼働している電池の交流インピーダンスを測定することができるという。
交流インピーダンス法による状態推定では、インピーダンスを複素表現して平面上に描画した、Cole-Coleプロットを測定するという。実際の電池を用いた性能評価については、立命館大学が担当した。パナソニックが開発したBMICと測定用ソフトウェアを用い、円筒形リチウムイオン電池の測定を行った。この結果、1Hz〜5kHzの周波数範囲で、これまでと同等精度でCole-Coleプロットの測定ができることを確認したという。
また、安定した温度環境が求められる交流インピーダンス測定に対し、今回は温度補正技術を開発し適用した。これは、交流インピーダンス測定時にリチウムイオン電池の温度も測定、インピーダンスの温度変化を標準温度に補正してCole-Coleプロットに描画するという方法だ。環境温度が異なる場合でも、同じ標準温度に正規化したCole-Coleプロットを、データベースとして蓄積していくことができるという。
パナソニックでは、交流インピーダンスの測定データを蓄積し分析することで、リチウムイオン電池の劣化診断や故障推定といった残存価値の評価が容易となり、リユース・リサイクルを加速できるとみている。
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