ローム、SiCパワーデバイスの生産能力強化:主要な生産工程を環境配慮型へ
ロームは、SiC(炭化ケイ素)パワーデバイスの製造拠点となるローム・アポロ筑後工場(福岡県筑後市)の新棟が完成したと発表した。製造に用いる電力を100%再生可能エネルギーで賄う環境配慮型の最新工場で、製造設備を順次導入し2022年の稼働を目指す。
稼働は2022年、各種災害対策を導入
ロームは2021年1月、SiC(炭化ケイ素)パワーデバイスの製造拠点となるローム・アポロ筑後工場(福岡県筑後市)の新棟の建屋が完成したと発表した。製造に用いる電力を100%再生可能エネルギーで賄う環境配慮型の最新工場で、製造設備を順次導入し2022年の稼働を目指す。
同社は、SiC SBDやSiC MOSFETといったSiCパワーデバイスの量産を2010年に始めた。また、フルSiCパワーモジュールやトレンチ構造を採用したSiC MOSFETの量産で先行するなど、技術開発で業界をリードしてきた。
製造面でも、グループ会社を含めていち早く一貫生産体制を構築し、ウエハーの大口径化や生産効率の改善に取り組んできた。同時に、BCM(事業継続マネジメント)体制を強化、環境負荷を軽減するためのモノづくりにも力を入れている。
ローム・アポロ筑後工場では、SiCパワーデバイスの生産能力を強化するため、2019年2月に新棟の建設を始めた。新棟は、排熱を有効に活用する高効率の空調設備や純水製造設備、LED照明などを導入する。これにより、CO2の排出量を従来設備に比べ20%(約7000t相当)も低減できるという。さらに、地震や浸水への対応をはじめ、ガス消火設備、非常用発電機を導入するなど、各種災害対策を備えた工場となっている。
なお、ドイツのグループ会社でSiCウエハーを製造する「SiCrystal」においても、再生可能エネルギーを100%利用した製造ラインの稼働を2021年度から予定している。これにより、SiCウエハーの主な生産工程は、全て再生可能エネルギーを利用した環境配慮型の生産体制となる。
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