ゲーム機は先端半導体の宝庫! 「PS5」「Xbox」のチップを比較する:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(51)(3/3 ページ)
ソニーとMicrosoftは2020年11月に、おのおの新型の据え置きゲーム機を発売した。テカナリエは2機種(正確には4機種を12月には入手して分解、チップ開封などを行い、解析レポートを発行済である)を早々に入手し、分解した。
アップグレードの余力を持たせた「Xbox」の基板
図4は、PlayStation5とXbox Series XのGDDR6-グラフィックRAMの配置の様子である。左側のPlayStation5では8個、右側のXbox Series Xでは10個となっている。ともに初期バージョン(2020年11月発売)ではトータル16GBのメモリ容量となっている。
PlayStation5では、2GB x 8 = 16GBとなっている。Xbox Series Xでは2GBを6個、1GBを4個として、2 x 6 + 1 x 4 = 16GBという構成である。
Xbox Series Xでは今後、10個とも2GBのGDDR6にした場合、基板を変えることなく、容量を20GBまで拡張できるわけだ。簡単に機能アップできる構造になっている。
そのため、メインのプロセッサ基板だけ入れ替えれば、16GB版と20GB版を簡単に作り分けられるようになっている。さらにI/O基板を分離しているので、I/O基板の入れ替えでインタフェースの機能アップも容易にできる構造だ。Microsoftは、大きな変更をせずに機能アップを行う可能性が高いと思われる!!
「PlayStation」の歴代プロセッサ
表3は、1994年に誕生したPlayStationと最新のPlayStation5までの主要な内部プロセッサをまとめたものである。ちなみに弊社刊行物の「テカナリエレポート」では2021年、これらチップを、再度全チップを開封してまとめたデータも発行している(3月発行のテカナリエレポート483号に詳細データあり)。
PlayStationは27年の歴史を持つ巨大プラットフォームである。それを支える半導体はまさに教科書的なサンプルとなっている。製造技術の微細化、CPUの種類、個数の変遷、グラフィックの変遷、チップのセットの変化などをPlayStationの歴史から十分に読み取れる。初代は当時の名門半導体メーカーLSI社からスタートし、PlayStation2では主に日本製、PlayStation3ではIBM製とNVIDIAの組み合わせなど、さまざまな過程を経ている点でも非常にユニークなヒストリーを持っている。なお全てのチップは弊社テカナリエレポートで鮮明なものを掲載している。
数年後に発売されるであろう次世代ゲーム機のスペックを、今から予想するのは楽しい。半導体は現在5nmプロセスが大々的に量産され、間もなく3nmプロセスもスタートする。まだまだ進化は続いている。当分先になるかもしれないが、次世代ゲーム機(の中身)を早く見たいものである。
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