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マイクロLEDディスプレイの市場拡大はまだ先製造技術やコスト面で課題(2/2 ページ)

マイクロLEDディスプレイは、OLED(有機ELディスプレイ)、LCD(液晶ディスプレイ)、量子ドットベースのディスプレイの潜在的な代替技術として派手に宣伝されているが、市場調査グループのIDTechExは警鐘を鳴らしている。同社のレポートは、ディスプレイ市場で他の技術に置き換わることに焦点を当てるとともに、新たな市場を創出することも考察している。

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マイクロLEDディスプレイ、8つのターゲット市場

 IDTechExは、「マイクロLEDディスプレイは中期的に、8つの用途において既存技術に取って代わる可能性がある」と指摘している。具体的には、AR(拡張現実)/MR(複合現実)、VR(仮想現実)、大型ビデオディスプレイ、テレビおよびモニター、車載ディスプレイ、スマートフォン、スマートウォッチ/ウェアラブルデバイス、タブレット/ノートPCである。

 同レポートは、マイクロLEDディスプレイが既存技術に取って代わる機会に注目する一方で、「65型未満のほぼ全てのディスプレイには、現在市場を席巻しているLCDが採用されている」と述べている。IDTechExは、「LCDの大型化は、本質的に限界がある」と強調している。一方、OLEDは、最新モデルのスマートフォンを中心に市場シェアを拡大している。

 OLEDパネルの製造に関しては、生産能力や技術の成熟度と、川上の材料や装置から川下のアプリケーションまでのサプライチェーンの両方において韓国企業が優位に立っている。後者に関して言えば、Samsung Electronicsの中小型OLEDパネルはまずSamsungの他部門に供給され、LG Displayの大型OLEDパネルはまずLGのテレビ向けに供給されている。

 また、量子ドット(QD:Quantum Dot)技術も、市場競争がかなり激しくなっている。同技術は主にフォトルミネセンスを利用し、LCD構造にQD膜を適用することで色域を大幅に改善することができる。同技術を適用したディスプレイは急速に普及が進んでいる。

 He氏は、「それぞれの技術にはエンドユーザーを引き付ける固有の特長がある」と強調しながらも、「一部の価値提案は他の技術で提供できるが、マイクロLEDディスプレイには固有の価値提案がある」と述べている。

 ただし、「マイクロLEDディスプレイがOLEDに取って代わることができるかどうかは、少なくとも短中期的には、アプリケーションによって大きく変わる」との見解も示した。

 一般的なマイクロLEDディスプレイのフロントプレーンの場合、OLEDやLCDとは違い、面積ではなく必要なLEDの数によってコストが決まる。そのため、テレビと同じ解像度のスマートフォンを製造すると、コストは1桁下がるのではなくテレビと同程度になってしまう。

 新しいディスプレイ市場を創造するには、他の技術では実現できない機能や実現が難しい機能が必要だ。IDTechExのレポートではその代表的な例として、カスタム形状のディスプレイや、センサーを内蔵したディスプレイなどを挙げている。He氏は米国EE Timesに対し、「中期的に影響の大きいカテゴリーを1つ選ぶとすれば、ポータブルデバイス向けのカスタマイズ可能なディスプレイになるだろう」と語った。

 また、現段階ではマイクロLEDディスプレイの製造の難しさも、コストを押し上げる要因となっている。製造プロセスが改善されて、マイクロLEDディスプレイが費用対効果の高い製品となるためには、LEDの移載や修理、検査、光学的な技術などまだ多くの部分でイノベーションが必要となる。「マイクロLEDディスプレイの量産を実現するには、多くの課題がある。検査に関しては、欠陥をゼロにするためには、関連する企業との適切な連携も重要だ」(He氏)

 現在、ソニー、LG、SamsungなどがマイクロLEDディスプレイを披露している。ソニーは2021年夏にも、マイクロLEDディスプレイ「Crystal LED」を発売すると発表した。Samsungは、55型のHD映像を4枚同時に表示できる110型のモデルを披露した。Samsungは「この110型モデルは、最先端の表面実装技術と、半導体事業から派生した新しい生産プロセスを用いることで実現した」と説明する。

 さらにAppleも、モバイル端末向けにマイクロLEDディスプレイを開発中とされている。

【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

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