2012サイズで150℃保証の車載用インダクターを開発:実装面積を22%削減、TDK
TDKは2021年8月、従来品より実装面積を22%削減できる小型化を実現した車載電源回路用インダクター「TFM201210ALMAシリーズ」を開発したと発表した。同社は、「2012サイズで150℃に対応した金属パワーインダクターは『業界トップレベル』だ」としている。
クルマの電装化が進む中、搭載されるカメラモジュールやV2X(Vehicle to everything)用通信モジュールの小型化への要求、ひいては使用される電子部品の小型化への要求も高まっている。TDKは2021年8月、従来品より実装面積を22%削減できる小型化を実現した車載電源回路用インダクター「TFM201210ALMAシリーズ」を開発したと発表した。「2012サイズで150℃に対応した金属パワーインダクターは『業界トップレベル』だ。市場のニーズに応え、実装基板における省スぺース化に貢献できる」としている。
HDD磁気ヘッド製造で培った薄膜プロセス技術で
TDKによると、車載カメラモジュールやV2X用通信モジュール用のパワーインダクターはこれまで「2016サイズ(2.0mmx1.6mm)」が用いられていたが、さらなる小型化のニーズが強かった。しかし、車載用途では同時に、高い保証温度要求があるため、「これまで2016サイズより小さく、保証温度150℃に対応した金属パワーインダクターは市場になかった」(2021年7月時点の同社調べ)という。
同社は、今回、独自の磁性材料技術および構造設計によって、2012サイズ(2.0mm×1.25mm)と小型ながら温度保証範囲−55〜+150℃を実現した。
具体的には、金属磁性材料でありながらも絶縁性を確保した独自材料を開発したほか、TDKがHDD磁気ヘッド製造で培った薄膜プロセス技術を活用した。この薄膜プロセス技術によって小型化しつつも、同技術によってコイル導体間とコイル導体を高精度に制御することができ、コイル間のショートリスクを低減、高信頼性を実現した。同社説明担当者は、「もともとさらに微細なものを形成するための工法であり、小型化しても十分高精度の制御が可能だ」と説明している。
TFM201210ALMAシリーズの特長と製品仕様。同様のコンセプトで開発した「TFM-ALMAシリーズ」の1つという位置付けで、今回初めて2012サイズの製品としてTFM201210ALMAシリーズを発表した 出典:TDK(クリックで拡大)
また、絶縁膜についても高耐熱の材料を使うことで高い保証温度範囲に対応したうえ、樹脂電極によって耐振動、衝撃、たわみなどの機械的な強度も向上。「エンジンルーム内などの過酷な環境でも十分に対応できる」としている。TFM201210ALMAシリーズは、AEC-Q200に準拠している。
従来品である2016サイズ製品「TFM201610ALMAシリーズ」との比較は下図の通りで、新製品では実装面積を22%削減しつつ、同等の電気的特性(1.0μH品で比較)や保証温度範囲、定格電圧を実現。「カメラモジュール、V2X通信モジュールの小型化および部品搭載数増による需要に対応する」としている。
TFM201210ALMAシリーズは、同月量産を開始。まずは月産100万個からスタートする。サンプル価格は1個当たり20円だ。今回リリースしたのは0.56μHと2.2μHの2製品で、今後0.47μH、1.0μH、1.5μH品も提供予定だ。
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