3nm以降のCMOSロジックを支える多層配線技術:福田昭のデバイス通信(318) imecが語る3nm以降のCMOS技術(21)(2/2 ページ)
「IEDM2020」の講演内容を紹介するシリーズ。今回から、「次世代の多層配線(BEOL)技術」の講演内容を紹介していく。
微細化限界が近づく銅(Cu)の多層配線
最近のCMOSロジックを支える多層配線技術は、銅(Cu)配線である(参考記事:「オンチップの相互接続技術を過去から将来まで概観」)。製造プロセスとしてはダマシン技術(絶縁膜をエッチングして溝に金属をメッキする技術)とCMP技術(平坦化技術)を駆使する。
銅(Cu)配線の欠点は、微細化によって配線抵抗が急激に増加することだ。Cu原子は周囲に拡散しやすいので、拡散を防ぐバリア層をCu金属層と絶縁膜の境界に成膜する。このバリア層は電気抵抗が高く、さらには薄くしづらい。このため、Cu配線層の断面寸法を縮小すると、バリア層(高抵抗層)の比率が増えてしまう(参考記事:「銅(Cu)配線の微細化と抵抗値の増大」)。
微細化による電気抵抗の増大を緩和する方法は2つある。1つは、Cu配線層を高くすること。もう1つは、配線金属をバリア層が不要な材料に変更することである。imecは講演で主に、配線金属をCuからルテニウム(Ru)に変更する試みを述べていた。
現行のリソグラフィ技術でも、2nm以下の技術世代に相当する、16nmという非常に狭いピッチの平行配線パターンを形成できる。ArFの液浸露光技術と、マルチパターニング技術を組み合わせる。マルチパターニング技術は、SAOP(自己整合8回パターニング)を選択する。これらの要素技術によってimecは2018年に、16nmピッチの平行配線パターンを試作発表済みだ。
16nmと狭いピッチの平行配線パターンを形成した断面の電子顕微鏡観察像。出典:imec(IEDM2020のチュートリアル講演「Innovative technology elements to enable CMOS scaling in 3nm and beyond - device architectures, parasitics and materials」の配布資料)
ただし、試作した平行配線パターンは実用的とは言い難い。SAOPは製造のスループットを著しく低下させる。また配線寸法のばらつきが大きく、抵抗値と容量値が配線ごとに大きく変化する。さらには配線抵抗そのものが高い。これらの課題を解決する必要がある。
(次回に続く)
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