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多層配線のビア抵抗を大幅に低減する「スーパービア」:福田昭のデバイス通信(322) imecが語る3nm以降のCMOS技術(25)(2/2 ページ)
今回は、奇数番号(あるいは偶数番号)で隣接する配線層(2層上あるいは2層下の配線層)を接続するビア電極の抵抗を大幅に下げる技術、「スーパービア(supervia)」について解説する。
2層分の配線間を一気に貫通する「スーパービア」
そこで考案されたのが、M3からM1を一気に貫通するビア「スーパービア(supervia)」である。製造工程は、例えば以下のようになる。M1とM2(あるいはダミーのM2)を形成し、M2の上に層間絶縁膜を成膜する。その上に窒化チタン(TiN)のハードマスクを堆積し、M1の表面まで貫通する垂直な孔(スーパービア)を掘る。それからスーパービアに高融点金属(例えばルテニウム(Ru))を埋め込むとともに、M3を成膜する。
第3層金属配線(M3)と第1層金属配線(M1)を接続するスーパービアの製造工程。左端は構造図。M2はダミー層である。右端はM3を形成後の断面を、エネルギー分散型X線分光分析装置(EDS装置)と電子顕微鏡で観察した画像。中央の写真2点はハードマスク(TiN)層の厚みによるビアパターンの違い。TiN層を30nmと厚くすることで、良好なパターンを得られる。出典:imec(IEDM2020のチュートリアル講演「Innovative technology elements to enable CMOS scaling in 3nm and beyond - device architectures, parasitics and materials」の配布資料) (クリックで拡大)
imecは、銅(Cu)とコバルト(Co)、ルテニウム(Ru)でそれぞれ、M1とM3を接続するスーパービアを試作してみた。銅(Cu)はビア底部内壁への埋め込みが不十分であり、コバルト(Co)はビア電極内部にボイド(空孔)が生じた。良好にビア電極とM3を形成できたのは、ルテニウム(Ru)だけだった。
銅(Cu)とコバルト(Co)、ルテニウム(Ru)でそれぞれ、M1とM3を接続するスーパービアを試作した結果。上の表はバリアとライナー、配線の金属と成膜方法。下の写真はEDS装置と電子顕微鏡を併用して観察した断面画像。出典:imec(IEDM 2019の発表論文「Three-Layer BEOL Process Integration with Supervia and Self-Aligned-Block Options for the 3nm node」(論文番号19.3)) (クリックで拡大)
従来技術の42%にビア抵抗を大きく削減
そこでルテニウム(Ru)の多層配線で、M1とM3を接続するビアの電気抵抗を従来技術(スタックビア)とスーパービアで比べてみた。M1とM3は互いに平行な直線群で配線ピッチは36nm、M2はM1(およびM3)と直交する平行直線群で配線ピッチは21nmである。
試作したビアの抵抗値(中央値)は従来技術が66.4Ω、スーパービアが27.7Ωだった。スーパービアの抵抗値は、従来技術の2.4分の1(42%)と大幅に減少した。
スーパービア(左)と従来技術(スタックビア)(右)の抵抗値(測定値)。写真は断面の電子顕微鏡観察像。配線ピッチはM2が21nm、M1とM3が36nm。出典:imec(IEDM2020のチュートリアル講演「Innovative technology elements to enable CMOS scaling in 3nm and beyond - device architectures, parasitics and materials」の配布資料) (クリックで拡大)
(次回に続く)
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