「Wi-Fi HaLow」の本格普及に向け認証プログラムが開始:2022年には対応機器が2000万台に
Wi-Fi Allianceは2021年11月、「Wi-Fi HaLow」(IEEE 802.11ah)の認証プログラムである「Wi-Fi CERTIFIED HaLow」を開始した。
Wi-Fi Allianceは2021年11月、「Wi-Fi HaLow」(IEEE 802.11ah)の認証プログラムである「Wi-Fi CERTIFIED HaLow」を開始した。
Wi-Fi HaLowは、主にIoT(モノのインターネット)をターゲットとした低消費電力かつ長距離の無線通信規格。920MHz帯を使用し、1)Wi-Fiの伝送エリアが拡大する、2)約1kmの長距離通信が可能で、かつ低消費電力、3)画像や映像の送受信もできる数メガビット/秒程度のスループットが可能、4)1つのAP(アクセスポイント)で数千台のデバイスをサポート、といった特長を持つ。Wi-Fi Allianceのマーケティング担当シニアバイスプレジデントを務めるKevin Robinson氏は、2021年12月2日にオンラインで開催された日本のメディア向け説明会で、「産業用IoT、小売り、農業といったさまざまなIoTアプリケーションに適用できる」と述べる。
IoT向けの通信規格には、SigfoxやLoRaWAN、Wi-SUN、NB-IoTといったLPWA(Low Power Wide Area)ネットワークや、Bluetooth Low Energy(BLE)などがあるが、Robinson氏は、「Wi-Fi HaLowは、スピード、消費電力、通信距離、貫通性(壁などの障害物を貫通する)、セキュリティなどを含めた全体的な特性で見ると、他の通信規格を上回っている。より多様なIoTアプリケーションに対応する通信規格として、優れている」と強調する。
対応機器は少ない
海外での利用は既に進んでいて、Wi-Fi HaLowに対応するチップを開発するベンダーも増加している。例えば、米Newracom、米Adapt、オランダMethods2Business、米Palma Ceia SemiDesign(PCS)、オーストラリアMorseMicroなどがある。とはいえ、他のLPWAに比べると少なく、対応している端末(APやゲートウェイ)も少ない。これについてRobinson氏は、「Wi-Fi HaLowは、採用や導入の段階としてはまだ初期であり、対応端末が少ないことも致し方ないと考えている。ただ、われわれとしてはそれほど心配はしていない。IoTの新たなユースケースに、採用が拡大していくと確信している」と述べる。
「Wi-Fiそのものの歴史を振り返ってみても、開発企業は当初は限られていた。Wi-Fiが普及するにつれて、その数も増えていった。Wi-Fi HaLowについても今後、開発企業が増えてくるのではないか」(同氏)
Wi-Fi HaLowの市場規模については、「アナリストの予測によれば、2022年にはWi-Fi HaLowのデバイスが1000万台が出荷されるとみられている」(Robinson氏)とする。「産業分野では既に導入が進んでいるが、今後は民生分野で勢いを増していくだろう」(同氏)
IDCの2020年9月のデータによれば、世界のWi-Fi接続機器は累計370億台に上り、年間の出荷台数は40億台に達する。インターネットのデータトラフィックの半分以上がWi-Fiを経由しているとされ、世界経済に年間3兆米ドル以上貢献しているという。Wi-Fi Allianceによれば、日本におけるWi-Fiの経済効果は、2021年は2510億米ドル、2025年には3250億米ドルに達する見込みだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 2020年度内の国内利用開始目指す、IEEE 802.11ah
920MHz帯を使用するLPWA(Low Power Wide Area)ネットワーク規格「IEEE 802.11ah(以下、802.11ah)」の国内利用実現に向けた活動を進める「802.11ah推進協議会」は2019年12月5日、都内で第2回総会を実施。発足から1年間の活動報告などを行った。同会は、2020年度内のIEEE 802.11ah国内利用開始を目指している。 - 「802.11ah(Wi-Fi HaLow)」の実証実験を公開
802.11ah推進協議会は、IoT(モノのインターネット)通信システムに向けたWi-Fi規格「IEEE 802.11ah(Wi-Fi HaLow)」について、総務省から「実験試験局免許」を取得した。「ワイヤレスジャパン2019」でその実証実験を公開する。 - アットマークテクノ、IoTゲートウェイを開発
アットマークテクノは、最大2Wの電力消費で間欠動作する「Armadillo-IoTゲートウェイ A6」を開発した。小型の太陽光パネルや蓄電池と組み合わせることで、電源環境が厳しい場所でも容易にネットワーク網を構築し、データ収集が可能となる。 - ローム、Wi-SUN JUTA対応無線通信モジュール
ローム製の無線通信モジュールが、スマートメーター向けの新たな国際無線通信規格である「Wi-SUN JUTA」の認証を取得した。 - 6Gは2030年をメドに実用化、コロナで仕様策定に遅れも
世界トップレベルの無線通信研究者が集まる「Brooklyn 6G Summit」が、2021年10月18〜19日に開催された。これにより6G(第6世代移動通信)市場は、大きな後押しを受けることになるだろう。この大規模サミットの開催によって、基本的な6Gインフラの準備がまだ整っていない状態でありながらも、新技術のハイプサイクルがかつてない早い段階で始動することになる。【修正あり】