Nestwaveが低電力GPSトラッカーを発表、薄く再利用も可能:狙いはグローバルロジスティクス
Nestwaveは、バッテリー寿命が数年持続する、薄くて再利用可能なロジスティクストラッカー「ThinTrack」をSAMEA Innovationと共同開発している。同社が「CES 2022」(2022年1月5〜8日、米国ネバダ州ラスベガス)で発表したThinTrackは、Nestwaveのジオロケーション技術を使用して消費電力を削減し、バッテリー寿命を延ばしている。Nestwaveは、欧州連合(EU)の「Horizon 2020」プログラムの開発支援を受けている。
コンポーネント数削減で、部品コスト減&バッテリー寿命を延ばす
Nestwaveは、バッテリー寿命が数年持続する、薄くて再利用可能なロジスティクストラッカー「ThinTrack」をSAMEA Innovationと共同開発している。同社が「CES 2022」(2022年1月5〜8日、米国ネバダ州ラスベガス)で発表したThinTrackは、Nestwaveのジオロケーション技術を使用して消費電力を削減し、バッテリー寿命を延ばしている。Nestwaveは、欧州連合(EU)の「Horizon 2020」プログラムの開発支援を受けている。
NestwaveのCEO(最高経営責任者)を務めるAmbroise Popper氏はインタビューの中で、「コストやバッテリー寿命の問題や、専用ハードウェアが依然として必要であるため、従来のポジショニングプラットフォームの市場は制約されている」と強調している。Nestwaveの目標は、IoT(モノのインターネット)ノード向けのポジショニングソリューションを提供することだ。同社は、従来のハードウェアベースの設計よりもコンポーネントの数を減らすことで、部品コストを削減してバッテリー寿命を延ばすことを目指している。Popper氏は、「Nestwaveの独自技術は、ジオロケーションをより多くのアプリケーションに広げるものだ。コンポーネント数を減らすことで消費電力を削減し、環境の持続可能性と二酸化炭素排出量の削減にも貢献する」と述べている。
測位は、セルラーネットワークのアクセスに使用するモデムチップと、屋外環境用の高精度GPSチップ、スマートフォンやスマートウォッチに搭載された屋内ロケーション用のWi-Fiチップで実行される場合が多い。ただし、GPS ICのようなコンポーネントは、電力を大量に消費する。充電式の民生機器と違って、バッテリーの充電や交換なしで長時間動作することを目的としたIoTデバイスには、この方式は適さない。
GPS受信機をソフトウェアIPとして実装
Nestwaveのプラットフォームは、GPS受信機をソフトウェアIPとして実装することで、既存のセルラーIoTチップセットに測位機能を追加する。「NestCore」IPは初期測位時間を大きく短縮し、感度や精度を損なうことなく、消費電力を大幅に削減することができる。同IPは、モデムチップの既存の無線機能とコンピューティング機能を使用するため、外部GPS/GNSSチップセットは不要で、ソフトウェアは既存デバイスと互換性があるため、システムを再設計せずに実装することができる。
組み込みIPは、デバイスのローカルリソースを使用して、衛星や4G(第4世代移動通信)/5G(第5世代移動通信)基地局、Wi-Fiアクセスポイントからタイミングと距離の情報を抽出する。従来デバイスのアプローチと異なり、大規模なデータベースをダウンロードする必要がない。処理された情報は、非常に短いメッセージとしてクラウドに送信される。Nestwaveの「NestCloud」は、この情報とアシスタンスデータを組み合わせて実際の位置を特定する。
ThinTrack GPSトラッカーは、LTE-M/NB-IoTモデムとアンテナ、バッテリー、SIM、センサーなどの電子機器を組み合わせた、大きさ82×35×3mm、重さ15gのデバイスで、これまでは正確な位置を特定できなかった荷物や文書の監視などの用途を想定している。NestwaveのGPS情報はハードウェアではなくソフトウェアで実装されているため、トラッカーは別のGPSチップセットを必要としない。また、部品点数の削減と低消費電力化によって、小型バッテリー1つで数年の動作が可能だという。
NestwaveのNestCore IPは、スペースに制約のある設計に無線機能を統合するSameaの技術と組み合わされている。トラッカーが起動すると、安全なNFCスマートフォンアプリを使用して、各アイテムの固有のIDが読み取られる。Popper氏は、「DHLの荷物やFedExを想像してほしい。この小さな15gのデバイスを封筒の中に入れるか、取り付けるだけで、追跡機能を提供できるのだ。われわれは、これらの企業との新しいビジネスの可能性を大きく開くことができると信じている」と語った。
Popper氏は、「バッテリーは設計におけるサイズの大部分を占めている」と付け加えた。「われわれは、とても平らでコンパクトなバッテリーを選んだ。理由は、FedExのようなタイプの封筒に収まるようにしたかったからだ。そのため、超薄型のフォームファクターにした。他の用途、例えばモニタリングなどでは、より低いものを実現できるかもしれない」(同氏)
ThinTrackは世界の物流業界をターゲットにしている。薄くて防水性のあるデバイスを、輸送書類に使われる封筒やビニール袋に入れることで、個々の荷物や手紙を正確に追跡することが可能になる。また、荷物や産業用工具の盗難防止にも応用できるだろう。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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