富山大ら、乾電池1本で発光する有機ELを開発:駆動電圧を従来の約3分の1に
分子科学研究所と富山大学の研究グループは、乾電池1本でディスプレイ並みの明るさに発光する有機ELを開発した。有機ELを発光させるための駆動電圧を、従来の約3分の1に低減することが可能になる。
界面における有機分子同士の相互作用を制御し、蛍光色素をドーピング
分子科学研究所の伊澤誠一郎助教や平本昌宏教授と、富山大学の森本勝大准教授や中茂樹教授による研究グループは2022年1月、乾電池1本でディスプレイ並みの明るさに発光する有機ELを開発したと発表した。有機ELを発光させるための駆動電圧を、従来の約3分の1に低減することが可能になる。
有機ELは高画質な映像を表示できるため、スマートフォンや大画面TVなどに搭載されている。面発光光源のため、次世代照明としても注目されている。一方で、大きな駆動電圧を必要とすることがこれまで課題となっていた。例えば、オレンジ色を100cd/m2で発光させるために、乾電池3本分に相当する4.5V程度の電圧を必要としていたという。
研究グループは今回、発光を担う2種類の有機半導体材料における界面でのアップコンバージョンという過程を利用して、発光効率を向上させた。発光プロセスはこうだ。注入された電子と正孔が、電子輸送層と正孔輸送・発光層の界面で出会って再結合する。これによって生成された2つの三重項励起状態が衝突し、エネルギーの高い一重項励起状態を作り出し発光する。
発光層を電子/正孔輸送層で挟み込んだ従来構造の有機EL素子だと、発光し始める電圧は3.5V程度からであった。これに対し、今回開発した有機EL素子は、オレンジ色(波長608nm)の光が、1V以下から発光を始めることが分かった。
また、電子輸送層には従来の「フラーレン」ではなく、結晶性の高い「ペリレンジイミド」を用いた。これにより、界面における有機分子同士の相互作用を制御し失活を抑えた。しかも、発光層にペリレン蛍光体をドーピングさせ発光を促進させたことで、発光輝度が大幅に向上。従来のアップコンバージョン過程を用いた有機EL素子に比べ、約70倍も高い発光効率を実現することができたという。
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