差し込むだけでセキュリティが向上、microSDカード:データを暗号化しながら書き込む(2/2 ページ)
産業用途向けのフラッシュストレージを手掛けるスイスのSwissbit(スイスビット)は、2021年11月にセキュリティ機能付きのmicroSDカード「iShield Camera」を発表した。
Siemensからスピンアウトした企業
Swissbitは、2001年にドイツSiemensのメモリ部門が独立して設立された企業だ。フラッシュメモリとDRAMモジュール(DIMM)を民生および産業向けに手掛けていたが、コンシューマー市場は2008年に撤退し、現在は組み込み向けを含む産業向けにフォーカスしている。2017年にはDRAMモジュール事業から撤退し、フラッシュストレージおよびセキュリティに特化した。
DRAM事業撤退の理由について友森氏は、「幾つか要因はあるが、DIMMの需要がそれほど高くなかったことと、DIMMでは規模の大きいDRAMサプライヤーと競争し続けねばならなかったことが挙げられる。一方でフラッシュストレージは、特に欧州ではそれほど競合が存在せず、当社の価値提案を十分に生かせる分野だった」と述べた。
直近では、2021年にフラッシュコントローラーを手掛けるドイツHyperstoneを買収。これによりSwissbitは自前のコントローラーを獲得した。「買収するまでは、Hyperstoneをはじめ、他社からコントローラーを入手して製品に搭載していた。今後は徐々にHyperstoneのコントローラーに切り替えていく。コントローラーは、フラッシュの寿命や信頼性に関わる技術であり、そこにノウハウが詰め込まれている。フラッシュストレージを差別化できる最も大きなポイントがコントローラーなので、今後は製品の差異化を、より実現しやすくなるだろう。“自前”のコントローラーだと、特に日本の顧客からの評価も高くなる」(友森氏)
Swissbitの製品はフラッシュ搭載のストレージで、カードタイプ、モジュールタイプ、組み込みタイプの3つがある。いずれもメモリのダイとコントローラーのダイを搭載している。「基本的に全てのフォームファクターで提供する」と友森氏は述べる。
製品は全て、ドイツ・ベルリンの自社工場で製造し、アセンブリから検査まで行っている。ベルリン工場の生産能力は月産200万〜300万ユニットである。
Swissbitのターゲット市場は、ひと言で言えば「コンシューマー以外」(友森氏)だ。特に、ロボットやFA(ファクトリーオートメーション)用PLC(Programmable Logic Controller)、基地局やルーターなど、高い信頼性が求められる用途に向ける。友森氏は「特に欧州のFA市場では、非常に高いシェアを持っている」と述べる。今後は車載にも注力していく計画だ。
「われわれが追及しているのは、信頼性と耐久性だ。当社の製品は10年、20年使用できる。市場には3年程度で寿命を迎えるフラッシュストレージも多く、そうしたストレージを使用した場合、新しい製品にかかるコストに加え、差し替え時のダウンタイムや作業工数に関連するコストも発生する。Swissbitの製品は、そうしたコストも含め、TCO(Total Cost of Ownership)の低減を実現する」(友森氏)
日本ではPCIe/NVMeに対応した製品で勝負
日本法人は2004年に開設されていて、既に18年近く日本で事業を行っている。
日本の戦略における差別化ポイントは、寿命監視ツールだと友森氏は述べる。「日本の顧客は、フラッシュストレージの使用期間を特に気にする。そこで、当社が独自に開発した、フラッシュメモリの状態をリアルタイムで確認できるツールを提供している。他社も同様のツールを提供しているが、われわれのツールは確認できる項目が多いことが特長だ」(同氏)。さらに、書き換え中の電源瞬断などに対応するため、電力損失保護ソリューションも提供する。
だが、日本市場では大手の競合がひしめく。友森氏は「すぐに当社の製品への置き換えというのは、なかなか難しい」としつつ、「ただ、競合他社が強みを持っているのは比較的レガシーな製品だ。PCIe(PCI Express)やNVMe(Non-Volatile Memory Express)など、将来有望な技術に対応した製品であれば、当社は十分に勝負できると考えている」と語った。
「現時点では、日本では、SATA製品が最も需要を見込める製品だ。同製品を中心に売り上げ規模を拡大していく。さらに、PCIe対応品をフックにして顧客を獲得していきたい。PCIeは、将来的にSATA市場を上回ると予測されているので、日本市場をしっかりおさえていく」(友森氏)
その他、インダストリーオートメーションや医療機器、車載市場にも注力していく計画だ。特にFAでは、「トップシェアを取りにいく」と意気込む。「医療機器では新規顧客の開拓に力を入れる。セキュリティ分野は、欧州に比べてまだ日本は盛り上がっていないが、需要が増えてきているという実感はあるので、今後売り上げ比率を高めていく」(友森氏)
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