電源ICの応答性能を向上させる電源技術を確立:ロームのQuiCur(クイッカー)
ロームは、電源ICの負荷応答特性を向上させる新たな電源技術「QuiCur(クイッカー)」を確立したと発表した。電源回路の設計工数を大幅に削減することが可能になる。
2つの専用誤差アンプを用い、帰還回路の課題を解決
ロームは2022年2月、電源ICの負荷応答特性を向上させる新たな電源技術「QuiCur(クイッカー)」を確立したと発表した。電源回路の設計工数を大幅に削減することが可能になるという。この技術を搭載したDC-DCコンバーターICは2022年4月より、リニアレギュレーターは2022年7月より、それぞれサンプル出荷を始める予定。
電源ICは、出力電圧を常に監視して出力電圧を微調整する「帰還回路」を搭載している。これにより、負荷電流などに変動が生じても素早く応答し、安定した電圧を出力することができる。ただ、応答性能を高めすぎると、回路動作が不安定となり、出力電圧が発振する。また、出力コンデンサーの静電容量によっては応答速度に影響が出るなど、課題もあった。
QuiCurは、応答速度(制御系)と電圧安定度(補正系)の信号処理を、2つの専用誤差アンプで役割分担する構成とした。これによって、これまでの帰還回路が抱えていた「不安定領域より低い周波数領域に使用不可領域が発生する」ことや、「出力コンデンサー容量によってゼロクロス周波数(f0)が変化する」といった課題を解決した。
開発した高速負荷応答技術「QuiCur」を電源ICに搭載すれば、不安定にならない極限までの応答性能を実現することができるという。これによって、電源ICに必要となる出力コンデンサーの容量を、同社従来製品の半分以下にしても、従来と同等の応答性能を実現できる。部品点数や基板実装面積を削減することも可能になった。
また、出力コンデンサーの容量が大きくなっても、瞬時の応答性能は変化しない。このため、より安定動作を必要とするような仕様変更があっても、容易に対応することができるという。
さらに、外付けコンデンサー容量を大幅に低減しても安定制御できる電源技術「Nano Cap」とQuiCurを組み合わせれば、出力コンデンサー容量をナノファラドオーダーまで低減できるなど、従来の10分の1以下に減らすことも可能となる。
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