「かつてない印刷解像度」実現する3Dプリント新興企業:半導体製造やディスプレイ向け(2/2 ページ)
スイスのETH Zurich(スイス連邦工科大学チューリッヒ校)からスピンアウトした3Dプリント企業Scronaは、960万米ドルの資金調達ラウンドを完了した。調達した資金は、MEMSベースの微細加工プリントヘッド技術を適用した新しいプリント技術の産業化に使用する。ターゲット市場は、半導体製造とハイエンドディスプレイだという。
半導体パッケージングの課題を解決
半導体パッケージングにおける主要な課題として再配線層がある。再配線層は、幅広いツールや長期の生産サイクル、複数のサプライヤー、材料の制限などを含む、22段階の複雑な製造プロセスが必要となる。Galliker氏は、「当社のプロセスでは、これをわずか2段階で完了できる」と主張している。「まず、われわれのプリント技術『NanoDrip』によるプリンティングを行い、次に、オーブン硬化を行う。これによって新規の生産にも即座に固定費で対応可能となり、同時に新材料を使うことで性能も向上する」と述べている。
Scronaのビジネスモデルは、研究機関、プリントヘッドメーカーのほか、半導体やディスプレイ向けのTier1装置ベンダーに、プリントヘッド技術のIP(Intellectual Property)を提供することを目的としている。Galliker氏は、「われわれのコアナレッジは、プリントヘッド技術のIPだ。顧客はこれを自社の機器に搭載することになる」と述べている。同社は現在、Silicon Austria Labs(SAL)とスイス連邦材料科学技術研究所と共同で、市場参入に向けた初期段階の取り組みを進めている。
Galliker氏は、「われわれの3Dプリント技術は、大量生産の製造業向けに投入することができる。われわれの目標は、1つのアプリケーションに集中することではない。パートナーやインテグレーターと協力して、さまざまな市場にこれを提供していく」と述べている。
Scronaは最初の量産用プリントヘッドを、約2年後に発売する予定だ。同社は、ディスプレイ市場、特にマイクロLEDとOLED(有機ELディスプレイ)がもう1つの主要なユーザーになると予想している。
同社の技術は従来のインクジェット技術に比べ、プリント解像度が100倍、噴射回数が10倍の高速プリントが可能だとしている。さらに、液滴が小さいため乾燥が速く、3Dプリントではナノメートル単位の膜厚制御が可能となっている。また、MEMSプリントヘッドはカスタマイズが可能で、動的にプログラムすることができる。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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