米新興企業、光I/OチップレットでNVIDIAと協業へ:次世代のインターコネクト(2/2 ページ)
米国カリフォルニア州に拠点を置く新興企業Ayar Labsは、同社のチップ間光通信技術を中心としたエコシステムを構築するという。NVIDIAとの協業により、光I/O技術を適用した次世代アーキテクチャの開発に取り組んでいるところだ。
光源と光I/Oチップレットを切り離す
Ayar Labsが初期段階で下した重要な決断の一つに、光チップレットから光源そのものを分離したという点がある(同社は、スタンドアロンの多重波長レーザー光源「SuperNova」を独自開発している)
Wade氏は、「レーザーの物理学は、CMOSマイクロエレクトロニクスの物理学から切り離されているが、それは高温下で動作できないからだ。急激に電力効率が低下し、信頼性も指数関数的に悪化してしまう」と述べる。
熱設計電力(TDP:Thermal Design Power)の高性能演算ノードは、数百ワットの電力を使用するため、SoCパッケージの内部温度が80°C以上に上昇する可能性がある。SoCから光源を分離できれば、離れた場所に配置することで、温度を55°C未満に維持することが可能だ。
IntelやHPEもAyar Labsに投資
Wade氏は、「Intelは2019年、DARPA PIPESプロジェクト(高い拡張性を実現するフォトニクスパッケージ)において光I/Oを提供するために、Ayar Labsを選んだ。プロジェクトでは、Ayar LabsのチップレットをIntelのFPGAと連携させるデモが披露されたが、今や両社のパートナーシップは、FPGAの枠を超えて広がっている」と説明する。
「しかしここで問題となるのは、『Ayar Labsの興味深い技術は、実際にSoCの問題を解決可能な方法で、重要なフルレクチルSoCからミリメートル未満の範囲内で設計や製造、組み立てなどを実現できるのだろうか』、という点だ」(Wade氏)。「DARPA PIPESプロジェクトでの取り組みは、当社の技術と製品アーキテクチャの性能を実際に証明するものだった。それは、大きなターニングポイントとなった」(同氏)
現在、Intelの投資部門であるIntel Capitalは、Ayar Labsの戦略的投資機関となっている。
HPE(Hewlett Packard Enterprise)も、同社のベンチャーキャピタル部門であるHewlett Packard Pathfinderを通じて、Ayar Labsに戦略的投資を行っている。Wade氏は、HPEのインターコネクト技術である「Slingshot」(HPEが2019年に買収したスーパーコンピュータ大手、CrayのHPC[高性能コンピューティング]ファブリック)のロードマップでは今後、光I/Oチップレットが必要になると指摘している。HPEとAyar Labsは、フォトニクスの研究開発で協力し、エコシステムを構築する計画だ。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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