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パワー半導体の信頼性を高める厚みがより均一な銅条:古河電工、20年比倍増の出荷目指す(2/2 ページ)
古河電気工業(以下、古河電工)は2022年6月22日、パワー半導体に使用される絶縁基板の反りを低減することのできる無酸素銅条の圧延技術を開発し、同技術を適用した無酸素銅条製品の出荷を一般に開始すると発表した。
パワー半導体の信頼性高める銅条として提案強化へ
板厚ばらつきを抑えたGOFCは、2017年から出荷しているABM接合用の無酸素銅条で、耐熱性の高さが特長。ABM接合の熱処理工程で750〜800℃程度の熱にさらされた場合でも結晶粒の粗大化を防ぎ、結晶粒を小さいまま維持できる。一般的な無酸素銅条は、500℃程度の熱で、結晶粒が粗大化した。結晶粒が粗大化すると、超音波顕微鏡(SAT)でのテスト時に超音波の反射が少なく、チップと絶縁基板を接合するはんだ内のボイド検出が難しくなる。結晶粒が小さければ、SATの超音波の反射が増え、はんだ内のボイド検出感度が高まるという利点がある。「SATでの検査が不明瞭でボイドがないことを証明できずに、不良品として出荷を見送るといったケースが少なくないと聞いている」とし、GOFCを使用することでそうした『見なし不良品』を削減できるという。
その他、GOFCはヤング率が低く、チップ剥離率を低下させやすいといった特長を持つ。
古河電工では今回、GOFCでの板厚ばらつきを抑えたことで、より信頼性の高いパワー半導体を実現できる無酸素銅条として、拡大が続くパワー半導体での需要を取り込んでいく方針。2022年度下期には、2020年度実績の2倍に相当する月間50トン以上の出荷を計画している。
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