カーボンナノチューブによる高熱伝導材料を実現、Carbice:低熱抵抗&安定した熱抵抗を両立(3/3 ページ)
本記事では、米Carbiceがカーボンナノチューブを用いて開発した手法について詳しく見ていきたい。同社は、液体および固体の両方の「サーマルインタフェースマテリアル(TIM:Thermal Interface Material)」(熱界面材料)の特性を1つのソリューションの中で組み合わせた効果的な冷却システムを、どのようにして実現したのだろうか。
Carbiceのシミュレーター&テストラボ
Carbiceは最近、テクノロジーとエンジニアリングのコミュニティーがCarbice Nanotube技術と妥協のないCarbice TIMについて学ぶことができる新しいWebサイトを立ち上げた。
Cola氏は、「当社の『Carbice SIM』は、インタフェースの熱伝導率をテストせずに正確に予測できる世界初のシミュレーションパッケージだ。顧客が新しい設計をする際、テストに多くの時間と費用をかけることなく、最適化を支援することができる」と述べている。
Carbice SIMは実験をせずに実際のアプリケーション条件での熱伝導率を正確に予測することができる。「Carbice Lab」は顧客の認証コストの削減をサポートする。Carbice Labでは、エンジニアグループがさまざまな業種に対応した製品のテスト、シミュレーション、設計、納品を行っており、顧客はその結果を自分の目で確認することができる。最初の問い合わせから完成品まで、最短で14週間という短納期を実現するという。
Cola氏は、「テストラボであるCarbice Labでは、顧客のため品質評価を実施している。顧客の製品化までの時間を短縮することが、われわれの付加価値となっている。当社はこのラボを、エンジニアが熱設計に必要なサポートを見つけることができるコミュニティーリソースにしたいと考えている」と語った。
Cola氏によると、宇宙や自動車産業は、最も過酷な条件下で使用されることから、Carbiceの製品に大きなチャンスがあるという。
Cola氏は、「Carbiceは、認証の面で最も厳しい3つの市場に既に参入している」と語った。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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