再生可能エネルギー貯蔵の道筋を示す「CO2バッテリー」:リチウムイオン電池の置き換えに(2/2 ページ)
再生可能資源から生成したエネルギーの貯蔵には従来は電池、特にリチウムイオン(Li-ion)電池が使用されてきた。この記事では、リチウムイオン電池の限界を克服して、電池寿命を延ばし、コストを削減すると期待される、エネルギーの一時貯蔵のための革新的な技術「CO2バッテリー」を紹介する。
リチウムイオン電池の半分のコストで、3倍の持続時間を実現する
同社のシステムは、圧縮と膨張という2つの熱力学的変換を伴うだけなので、損失が少なく、圧縮空気や液体空気を作動流体とする同様のシステムよりも高い75%(77%±2%)の往復効率(RTE)を得ることができる。
リチウムイオン電池は公称で約95%のRTEを実現できるが、摩耗や経年劣化による性能低下の影響から実際のRTEは70〜80%程度となる。また、放電深度を下げて使用した場合、リチウムイオン電池の寿命は7〜10年ほどに短縮される。
Spadacini氏は、「CO2電池の効率はリチウムイオン電池に匹敵する一方で、CAPEX(資本的支出)は最初から40%低く、その後スケールメリットで大きく低下する。さらに、持続時間は3倍で、経年劣化もない」と述べる。
EnergyDomeは創業間もない会社ながら、既にイタリアのサルデーニャ島で商業用の実証プラントを稼働している(図2)。このプラントに加え、今後、発電容量20MW、エネルギー容量200MWhの拡張可能なフルスケールプラントが2〜3基稼働し、商業化の段階に入る予定だという。
Spadacini氏は、「われわれの目標は、リチウムイオン電池に代わる、コストが半分で、持続時間が3倍長く、同じ性能を持つ蓄電システムを作ることだ」と語った。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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