メモリ市場崩壊で、TSMCが22年3Q半導体売上高トップに:IC Insightsが予想
米国の市場調査会社IC Insightsは2022年9月7日(米国時間)、2022年第3四半期の半導体企業売上高ランキングの予想を発表した。同社は、2022年後半にメモリ市場が"崩壊"したことで、TSMCがSamsung Electronics(以下、Samsung)を抜き首位に立つと予想している。
米国の市場調査会社IC Insightsは2022年9月7日(米国時間)、2022年第3四半期の半導体企業売上高ランキングの予想を発表した。同社は、2022年後半にメモリ市場が"崩壊"したことで、TSMCがSamsung Electronics(以下、Samsung)を抜き首位に立つと予想している。
誰かがメモリ市場のスイッチを「オフ」にしたかのよう
IC Insightsは2022年8月、調査レポート「The McClean Report」の四半期更新において2022年の世界IC市場の成長率予測を11%から7%へと引き下げているが、同社はこの要因について「2022年後半にメモリ市場が崩壊したことがほぼ全てだ」と説明。「最近のメモリ市場の動向について発言しているメモリメーカーは、この急激な落ち込みを現在進行中の顧客による大規模な在庫調整によるものだとしている。さらに、この在庫調整期間は、少なくとも2023年初頭まで続くというのが大方の見方だ」と述べている。
メモリ市場の変化については、Micron Technologyが2022年6月に2022会計年度第4四半期(2022年6〜8月)の売上高が前期比で17%減少するとの予測を発表(後に少なくとも21%減と修正)した他、Western Digitalも2022会計年度第4四半期のカンファレンスコールで、顧客による在庫調整について「現四半期(2023会計年度第1四半期/2022年7〜9月期)には間違いなく急激に進むだろう」とコメント。さらに、2022年9月7日(韓国時間)には、Samsungが、2022年前半以降メモリ市場は劇的に変化していると言及したことが報じられている。
IC Insightsは台湾のDRAMメーカーNanyaについても「同社の月次売り上げデータを見ると、DRAM市場が好況から不況へといかに素早くギアチェンジしていくかが分かる」として紹介していた。同社の2022年8月のDRAM売上高は1億1400万米ドルと、前年同月(2億9400万米ドル)比で61%減となっている。また、5カ月前の2022年3月と比べて53%減と、急速に減少していることが分かる。
IC Insightsはこうした状況について、「まるで誰かが6月からメモリ市場のスイッチを『オフ』にしてしまったかのようだ」と表現している。
順調なTSMCと急落のSamsung
IC Insightsはこの急速なメモリ市場の落ち込みから、2022年第3四半期の半導体企業売上高ランキングにおいて、TSMCがSamsungを抜いて首位に立つと予想する。2021年の半導体売上高ではTSMCはSamsungを31%下回っていたが、IC Insightsは2022年第3四半期、TSMCの売上高が前期比11%増の202億米ドルと成長をする一方で、Samsungは同19%減の182億9000万米ドルとなることを予想している。Intelは同1%増の150億4000万米ドルで第3位となる見込みだ。
なお、ファウンドリー専業企業であるTSMCの売上高は半導体サプライヤーへの販売額となっているが、IC Insightsは、その後、各サプライヤーから最終顧客(電子システムメーカー)に販売される半導体の売上高を推定すると「『最終的な』売上高は、ファウンドリー全体の売上高の約2倍になる」と説明。そうした「最終的」なTSMCの売上高は2021年の時点で半導体市場全体の18.5%を占めており、そのシェアは2022年第3四半期には25%にまで高まる可能性が高いとしている。
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