「水晶デバイスと半導体の技術統合を強みに」、エプソン:「省・小・精の技術」を極める
セイコーエプソンは、「マイクロデバイス事業」に関する説明会を開催した。この中で、車載システムや産業機器などの用途に向け、水晶デバイスと半導体デバイスの技術を統合した製品の開発などで、同社の強みを打ち出していく方針を明らかにした。
特許の保有件数や、全世界における顧客サポート体制も強みに
セイコーエプソンは2022年9月27日、「マイクロデバイス事業」に関する説明会を開催した。この中で、車載システムや産業機器などの用途に向け、水晶デバイスと半導体デバイスの技術を統合した製品の開発などで、同社の強みを打ち出していく方針を明らかにした。
同社マイクロデバイス事業部門では、「省・小・精の技術」を核に、独自の「水晶デバイス」や「半導体デバイス」を開発し、社内外に供給している。「マイクロデバイス他」部門の2021年度売上高は1109億円で、全社売上高の約10%を占める。近年は、収益性を重視した事業運営への転換や、バランスのとれた製品構成などに取り組んできた。執行役員でマイクロデバイス事業部長を務める下斗米信行氏は、「2020年後半からは需要拡大も含め、構造改革の効果が表れてきた」と話す。
同社半導体デバイス事業は、社内向けのウォッチ用ICや液晶表示素子で培った低消費電力技術をベースに、マイコンやASIC、表示用ドライバーIC/コントローラーICなどの製品を手掛ける。製造拠点は山形県酒田市にある東北エプソンで、社内外向けの半導体デバイスに加え、シリコンファウンドリーも手掛けている。
一方、水晶デバイスとしては、水晶振動子や水晶発振器といった「タイミングデバイス」と、ジャイロセンサーや加速度センサー、慣性計測ユニットなどの「センシングデバイス」を開発、販売する。水晶デバイスでも、「省・小・精の技術」を強みとしてきた。フォトリソグラフィーによる加工技術をいち早く導入するなど、技術革新への取り組みがその原動力となる。
マイクロデバイス事業の“垂直統合オペレーション”
さらに、下斗米氏が強調するのは、「マイクロデバイス事業の垂直統合オペレーション」である。同社は半導体デバイスと水晶デバイスの両方を、設計から製造まで手掛けている。この強みを生かし、双方の技術者が連携しながら、水晶デバイスの特性を最大化するための発振回路を設計し、これらをワンパッケージに集積した製品/モジュールを開発していく考えである。
水晶デバイス分野における同社の強みとして下斗米氏は、製品競争力に加えて、「特許保有数」と「国内外に展開する販売網と設計・製造拠点および、これらをベースとした顧客に対するサポート体制」を挙げた。例えば、水晶デバイスの特許保有数は1743件で1位、ジャイロセンサーでも504件の特許を保有しているという*)。水晶デバイスと半導体の技術を統合した製品でも、多くの特許を取得している。
*)2022年9月時点のタイミングデバイスおよび水晶ジャイロセンサーの日本、米国、中国、台湾の特許件数(エプソン調べ)
同社の水晶デバイス製品は、産業機器向け、車載向け、民生機器向けおよび、5G(第5世代移動通信)/ネットワーク機器向けなど、幅広い用途を対象とする。こうした中で、プログラムで任意の周波数が得られる「プログラマブルSPXO(水晶発振器)」や、小型高精度で消費電流が極めて小さい「RTC(リアルタイムクロック)モジュール」「車載ジャイロセンサー」、小型無線モジュール向け「MHz振動子」といった製品群をさらに強化していく考えである。
この他、コロナワクチン輸送システムに搭載される温度モニターモジュールに、同社のTCXO(温度補償水晶発振器)が実装された。電子デバイスなどの需給がひっ迫する中で、対象の製品を最優先で供給するなど、社会課題の解決にも貢献していると強調した。
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