NTCJ、USB4対応機器向け「Re-Timer IC」を開発:ケーブル向けにeMarker内蔵品も
ヌヴォトンテクノロジージャパン(NTCJ)は、USB4対応機器に向けたRe-Timer IC「KM864741/KM864742」を開発、2023年1月から量産を始める。特に、USB4ケーブル向けKM864742は、USB PD(Power Delivery)を安全に行うための「eMarker」を内蔵している。
独自のケーブル細線化伝送技術で、長くて柔らかいケーブルを可能に
ヌヴォトンテクノロジージャパン(NTCJ)は2022年11月、USB4対応機器に向けたRe-Timer IC「KM864741/KM864742」を開発、2023年1月から量産を始めると発表した。特に、USB4ケーブル向けKM864742は、USB PD(Power Delivery)を安全に行うための「eMarker」を内蔵している。
USB4は、データ伝送速度が最大40Gビット/秒で、4K動画や高画質の画像など大容量の画像データをスムーズに転送することが可能になる。データ伝送速度が最大80Gビット/秒という「USB4 Version 2.0」仕様も既に発表されており、USB4対応の機器やケーブルも相次ぎ登場する見通しである。
同社はこれまで、HDMI2.0向け通信LSI「KM86478Xシリーズ」やHDMI2.1向け通信LSI「KM86480X/79Xシリーズ」を供給しており、高い市場シェアを持つという。HDMI市場で培ったこれらの高速アナログ技術を生かし、今回は「USB4」を始め「USB 3.2」「Thunderbolt 3」「DisplayPort 2.0」および、「DisplayPort Alt Mode」規格に準拠したRe-Timer ICを開発した。
新製品は、PCやタブレットモニター、スマートフォン、ゲーム機器を対象にした「KM864741」(eMarker非搭載)と、USB4ケーブルを対象にしたeMarker内蔵の「KM864742」である。受信側には最大35dBの信号損失を補償するイコライザーを、送信側には最大15dBを補償するエンファシス回路を搭載。さまざまな機器間で最大40Gビット/秒の送受信を可能にする高い相互接続性を実現した。
同社によれば「Re-Timer ICにeMarkerを内蔵するのは世界で初めて」という。しかも、USB Implementers Forum認証済みの「eMarker」を内蔵しており、システム設計者はeMarkerの認証取得や制御用ソフトウェア開発など、煩わしい作業が不要になる。
高密度実装や部材コストの削減も可能となる。競合他社のeMarkerは、外形寸法が2〜3mm角である。これに対し、eMarkerを内蔵した同社のRe-Timer ICは、パッケージ外形寸法が5×5mmの81端子VFBGAで供給される。
製品企画から開発、製造、保守に至るバリューチェーンも改善した。この結果、想定される総コストはUSB 3.2対応品を「1」とすれば、同社のRe-Timer ICは「約1.5倍」である。これに対し、他社製Re-Timer ICの場合は「2倍以上」になると試算している。
Re-Timer ICを開発するに当たり、同社が目標としたテーマの1つが、「USBケーブルを細くする」ことである。これを実現するため、Re-Timer ICとRe-Timer ICとの間を、独自の通信方式で伝送することにした。
この結果、使用するケーブルの直径を3.8mmまで細くできる。従来のケーブルは直径が5mmであり断面積はほぼ半分になるという。この結果、軽量化することができ柔軟性も向上する。ケーブル長は4〜5mまで対応可能だという。なお、採用した通信方式については、特許申請中として詳細は明らかにしなかった。
同社は、KM864741/KM864742の発売にあわせ、応用システムの開発期間を短縮できる「評価ボード」や「ファームウェア書き換えツール」「レファレンスパドルカード」などの開発環境も用意した。
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