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酸化銅が室温で「磁性体にも誘電体にもなる機能」を発現高圧力下中性子回折実験で確認

物質・材料研究機構(NIMS)は、英国のラザフォード・アップルトン研究所やオックスフォード大学と共同で、酸化銅を加圧すると室温で磁性と強誘電性を併せ持つ「マルチフェロイクス材料」になることを実証した。

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次世代メモリ材料や低電力光制御デバイスへの応用を期待

 物質・材料研究機構(NIMS)は2022年11月、英国のラザフォード・アップルトン研究所やオックスフォード大学と共同で、酸化銅を加圧すると室温で磁性と強誘電性を併せ持つ「マルチフェロイクス材料」になることを実証したと発表した。高圧力下中性子回折実験により、発現を確認した。

 マルチフェロイクス材料は、次世代メモリ材料や低消費電力の光制御デバイスへの応用が期待されている。しかし、ほとんどのマルチフェロイクス材料は、100K以下という低温環境でしかその機能を発現しなかった。

 研究チームは、マルチフェロイクス材料である酸化銅に注目した。酸化銅を加圧すれば、材料中の銅イオンと酸化物イオンの位置が変化する。これによって、磁気的な相互作用が大きくなり、マルチフェロイクス機能の発現温度は室温にまで上昇することが理論的に示されていたからだ。ただ、これまでは高圧下において微細なスピンを直接観察する方法がなく、実験による検証がなされていなかったという。

 そこで今回、高圧下でも微小なスピンを観測できる新しい高圧発生装置を用い、中性子回折実験を行った。この結果、酸化銅を加圧すれば室温でもマルチフェロイクス機能が現れることを確認した。


酸化銅を加圧すれば室温でもマルチフェロイクス機能を発現することを実験により確認 出所:NIMS

 また、高圧力下において「銅イオン間に働くスピン同士の相互作用(磁気的相互作用)の大きさ」および、「どの銅イオン間に相互作用が存在するか」という仮定を、独自の計算手法で算出し、室温で機能するマルチフェロイクス材料の開発に有用な「理論モデル」を確立した。

 酸化銅が室温でマルチフェロイクス機能を発現するには、18.5GPa(18万5000気圧)以上の高圧状態が必要となる。こうした中で、結晶のひずみを利用した薄膜の成長に、今回確立した理論モデルを応用すれば、大気圧下でも室温動作するマルチフェロイクス材料の開発が可能とみている。

 今回の研究成果は、NIMS先端材料解析研究拠点の寺田典樹主幹研究員、国際ナノアーキテクトニクス研究拠点のIgor Solovyev主幹研究員、機能性材料研究拠点の名嘉節主席研究員および、ラザフォード・アップルトン研究所、オックスフォード大学からなる国際共同研究チームによるものである。

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